【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 わたしは口もとだけで微笑んだ。この挑発に乗るのは危険だ。

「エマニュエル様、わたくし寡聞にして存じませんけれど……世俗で流行している新しいお芝居かしら」

「ふーん……」

「令嬢が敵役になるなど珍しい趣向ですのね」

「ゲームやヒロインはわからないの?」

「げぇむ? ひろいん?」

 わたしが今まで学んできた貴族令嬢の仮面を駆使して答えると、エマはさしあたって納得したようだった。

「そっか、本当に知らないのね。あなたの動きが不可解だったから、てっきりあなたも転生者なのかと思ってた」

「不可解?」

「だって、ゲームの中の悪役令嬢は第三王子と婚約なんてしないし。そもそも国外追放だもの」

「…………」

「うーん、ちょっとしたバグみたいなものかな? じゃあ、わたしがセドリックをもらっても大丈夫よね。わたし、逆ハールートを狙ってるから」

「な……何をおっしゃっているの?」

 セドリックをもらう? 逆ハー狙い? そんな……。

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