【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 セドリックを狙う、というエマの言葉に実感が湧いてくる。エマは『ヒロインの選択』で、セドリックを落とそうとしているのだ。

「あら、わたくしったら殿下のことをついお名前で……」

「あなたのような魅力的な方に親しくしていただけるのは光栄です。どうかセドリック、と」

「ありがとうございます……セドリック」

 両手で赤らんだ頬を隠し、うるうると潤んだ瞳でセドリックを見るエマ。

 いきなり呼び捨て……? さっさと親密度を上げようとしているってこと?

 セドリックもほんのりと頬を赤くして、まぶしそうにエマを見上げていた。



 ――これは、誰?



 熱い目でエマに見入っているこの少年は、本当にセドリック?
 わたしに大好きだ、愛しているとささやいたセドリックなの?



 わたしはめまいを感じて、胸もとで両手を握りしめた。
 攻略対象者はやはりヒロインに惹かれる運命なのだろうか……。





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