【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
愛しさがあふれる時
考えごとをしている間に、東屋の二人は盛り上がっていたらしい。なんだかイチャイチャしている。
「ヒューバート……」
「愛している、エマ」
その時、わたしの背後でカサっと小さな葉ずれの音がした。
「アーリア」
「きゃっ……」
驚いて叫び声を上げそうになったのを、すんでのところで抑える。
振り返ると、そこにはさっきまで東屋にいたセドリックが立っていた。「しーっ」と口もとに指をあててささやく。
「驚かせてごめんね」
「セドリック様」
「東屋から見えたんです。葉陰にアーリアの髪が見え隠れしていて」
「も、申し訳ございません……。盗み見ていたわけではないのです。偶然通りかかって」
わたしも小声で返した。
のぞき見していたのがバレバレだったのかと、涙目だ。
「ううん、責めているわけではないの。大丈夫、そんな顔しないで」
「わたくし、気づかれていました……?」
「僕じゃないとわからないくらいのかすかな輝きだから、心配しなくていいですよ」
ほっとした……と同時に、ちょっと引く。セドリック、わたしのストーカーみたい。