【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「あーあ、あの人たちは結局なし崩しか」

 東屋の二人を見て、セドリックはつぶやいた。あまり聞いたことのない、突き放した口調だった。

 違和感があった。それは決して、恋心を抱いた相手がほかの男を選んで落ちこんでいるという口ぶりではない。

 もっと冷静な、まるであてが外れて残念に思っているような……?

 あれ?
 ひょっとしたらセドリックは知っていたの? ヒューバートがここに来ることを。

 確か、ヒューバートはセドリックに呼ばれて探していたと言っていなかったっけ。ヒューバートとエマが修羅場で鉢合わせたのは偶然じゃなかった……?

「セドリック様?」

「うん?」

「エマニュエル様と二人で会われていたのは……、ヒューバート殿下がここに来たのも、もしや……?」

 セドリックは内心をうかがわせない微笑みを浮かべて、肯定も否定もしなかった。



 もしかして、セドリックはヒロインに惹かれていたわけではなかったの?

 しおれかけた希望がよみがえってくる。
 わたし……期待してもいいの?



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