【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
あなたが好きです
「アーリア……今の……。僕が好き? 本当に?」
「…………」
恥ずかしい。
まだ少女に見えるほどのいとけない少年に恋をしたことも、それを告白してしまったことも。
エマたちはもう東屋から去っていた。
わたしとセドリックは場所を変えて、別の庭園の長椅子に腰を落ち着けた。さっきの一角よりは人けがあって、時々人の声が聞こえる。
「アーリア、さっきの言葉は本当? それにセドリックって……呼んでくれましたよね?」
「……はい。申し訳ございません」
「なんで? なぜ謝るの?」
「わたくしは年かさで……、しかも、実のお兄様の婚約者だった女です。わたくしのような者がセドリック様を想うなんて」
セドリックは隣に座るわたしの、膝の上においた手をぎゅっと握った。
「アーリア、忘れないで。先に僕があなたに恋をして、求婚したのですよ」
きっぱりと言う声は、まだ少年の声。
けれど、惚れ惚れするような男らしさにあふれている。