【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「ヒューバート兄上との婚約は……僕がまだ子供でどうにもできなかったとはいえ、正直妬けます。でも、今は僕が婚約者ですから!」

 胸を張る様子は、子供が背伸びしているみたいで微笑ましい。

 そうしてわたしを笑わせておいてから、セドリックはふと真面目な顔になった。

「……ヒューバート兄上とは何もなかったのですよね? 口づけ、とか」

「はい、何も。わたくし、うっとうしがられておりましたし……」

「兄上は本当に女性を見る目がないな!」

 少年の大人のような口ぶりに、思わずぷはっと吹き出してしまった。
 淑女の仮面、早く戻って!

 セドリックは満足げに「間に合ってよかった」と独りごちた。

 ん? ……何が間に合った?

 もしかして。
 ヒューバートとの婚約破棄も、セドリックの差し金だったとか……。まさかね。

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