【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
プロポーズはボーイソプラノで
帰りの馬車の中で、王都の整然とした街並みを眺めながら、わたしはこれまでの人生をふりかえっていた。
もともとわたしは、第一王子ハロルドの婚約者になる予定だった。
第一王子はわたしより少し年上。わたしのお父様は宰相閣下の右腕なので、年まわりのよい娘たちの中ではパワーバランス的にもそこそこ。
しかし、問題が一つ。ハロルドはいくつか年上の辺境伯のご令嬢と恋をしたのだ。
すったもんだのあげく、なんとか恋人との婚約を勝ち取った第一王子。娘をないがしろにされたお父様は内心怒り心頭で、わたしを王家にねじこみ、第二王子ヒューバートの婚約者としたのだった。
ただ、ヒューバートはわたしより年下で、思春期まっさかり。
兄のお下がりで、生意気な年上の女を婚約者としてあてがわれることに反抗し、わたしたちの仲は非常に冷たいものとなった。
「それでも、アーリアはヒューバートが好き、だったんだよね……」