【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「席を立って戻ってこなかったのは、気持ちをしずめていたのです。アーリアが帰るまでに戻れなくてごめんなさい」

「…………」

 顔が熱い。そうだったの。

「言ったでしょう? ずっとずっと、あなただけが好きでした。あなたの優しさや、意に染まない状況でも精いっぱい努力する真面目さ、でも本当は好奇心旺盛で、何か思いつくと少女みたいに目がきらきらするところ……」

 少し大人っぽい、甘くとろけた眼差しがわたしをつつむ。
 揺れ動くわたしのすべての不安に一つ一つ応えてくれるセドリックが、なんだかわたしより年上のように感じた。

 けれど、セドリックはやっぱり十歳も年下なのだ。

「年齢は、よいのですか? セドリック様が成人になった時、わたくしはもう三十路近いですわ……」

「三十路のアーリアも楽しみです。きっと色っぽいだろうな」

「セドリック様……」

「恋したひとが年上だっただけ。その分、僕が早く大人になればいい」

 優しくて深い声音に涙ぐんだわたしの頬に、セドリックがちゅっとキスをした。

「あー、早く結婚したい! 思いきりアーリアを抱きしめたい!!」

 涙はあっという間に引っこんで、あきれたため息が出た。


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