【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
――ここはね、乙女ゲームの中の世界なの。ヒロインがイケメンたちに愛されて幸せになる世界。そして、わたしがヒロイン。わたしの選択次第で、みんなわたしに恋をするのよ。
エマは言った。
でも、それは違った。
エマは、セドリックがわたしとの婚約を押しつけられたと思っていたし、悪役令嬢は国外追放になるはずだと言っていた。
ゲームにはない展開。シナリオどおりにはいかない人生。
ここはゲームではなく、『リアル』の世界なのだ。
現実のあたたかい体温が、わたしの腕に絡みつく。
熱も、匂いも、悲しみも、喜びも、すべてがここにある。わたしの隣に。わたしの胸の中に。
「ねぇ、アーリア。もう一度、セドリックって呼んで」
「……セドリック、さま」
青く澄んだ瞳が、すねたようにわたしをにらんだ。
「アーリア?」
「……セドリック……」