【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
晴れ時々ざまぁ
セドリックがまた頻繁に我が家を訪れるようになり、わたしの毎日は充実感に満たされていた。
前世の人生を合わせても、これまでにないくらいに浮かれているかもしれない。
だって、セドリックが可愛いし、かっこいい。大好きなひとの背が伸びて、成長していく様子をそばで眺めていられるなんて、幸せしかない。
つまるところ、わたしたちは砂糖菓子みたいに甘い婚約ライフを堪能していた。
しばらくセドリックが忙しかったのは、ヒューバートにエマの本性を知らしめるために、いろいろ仕込んでいたかららしい。しかし、二人の仲は変わることなく、東屋の件は不発に終わったように見えた。
ところが、火種はずっとくすぶっていたようだ。
「えっ、エマニュエル様に?」
「兄上が?」
同時につぶやいて、わたしとセドリックはふと見つめあった。
不穏な話題と関係なく、思わずお互いに微笑んでしまう。甘い瞳が愛らしくて素敵。
「やれやれ、別の場所でやってくれたまえ。胸焼けしてしまうよ」
わたしたちに冷たい目を向けたのは、セドリックの上の兄、第一王子のハロルドだ。
今朝はハロルドに招かれ、セドリックと二人、例の客間を訪れている。