【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「衝撃だったでしょうね」

「自業自得ですけどね」

 ヒューバートに対するセドリックの評価は辛い。

 エマがハロルドを『誘惑』した日。
 ヒューバートはひそかにハロルドに呼び出され、その一部始終を陰から見せつけられたらしい。

 ハロルドの部屋の壁にはのぞき穴があり、隣の隠し部屋から丸見えなのだそうだ。



 ヒューバートはすべてを知ってしまった。
 自分の婚約者が、見た目どおりの一途な娘ではないということを。



 ああ、もしかして、これも一つの『ざまぁ』の形なのだろうか。ぼんやりと、前世で読んだ悪役令嬢の逆転劇を思い出す。

 ちょっとだけ、元婚約者が哀れになった。





 * * * * *





 王妃殿下の応接室に着くと、そこには話題にしていた当の二人がいた。

 豪奢なソファーに座る王妃殿下の前に、憔悴したヒューバートと、怒りに顔を真っ赤にしたエマが立っている。

 エマはわたしたちが入ってきたことに気づくと、わたしに向かって大きな声を上げた。

「なんでみんな、あんたを信じるの!? 悪役令嬢のくせに!」

「エマニュエル!」

 激したエマの腕をヒューバートがつかむ。

 ええ!? 何があったの?


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