【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「もちろん、わたくしは信じておりませんよ。あなたのことはヒューバート以上に知っていますからね」

「ありがとうございます、王妃殿下」

「いやねぇ、もうお義母様と呼んでほしいのに」

 王妃殿下は、ふふと笑った口もとを扇で隠す。

「セドリックと新たに婚約したことで、あなたが王家からうとまれているわけではなく、むしろ望まれているのだと周知したはずなのに……、近ごろまた妙な噂が流行っているようで困っていたのです」

 ヒューバートとの婚約を解消し、年の離れた弟のセドリックとすぐに婚約したのは、さすがに社交界のスキャンダルだろう。そう思って、わたしはしばらく社交を控えていた。

 だから、あまり最新の噂は耳に入ってこなかったけれど、そんなことになっていたのか。王妃殿下がいろいろ手を尽くしてくれていたことも知る。

「王妃殿下のお心遣いに感謝いたします」

「うふふ、あなたのそういう素直なところも好きよ」

「アーリアは僕の婚約者ですからね。もう何があっても、婚約者の変更はしませんから。もちろん母上にもあげません」

 セドリックが少しわざとらしい子供っぽい口調で、茶々を入れる。

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