【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「王妃様! やっぱり王妃様はだまされています!!」
その時、ヒューバートに押さえられて、なんとか沈黙を保っていたエマがついに爆発した。
「エマ、やめるんだ」
「いいえ、やめません。わたくしはもう侯爵家の人間で、あなたの正式な婚約者ですのよ。元平民だからと言って、不当に扱われるのはおかしいわ」
「元平民かどうかは今は関係ない。侯爵令嬢なら侯爵令嬢らしく振る舞うのだ」
「そうよ、わかっています。わたくしは侯爵令嬢。アーリア様が身分をかさに着て、わたくしをいたぶっていたことを、公明正大に裁ける立場なのよ!」
「…………」
「ね、ヒューバート。あなたもあのころ、わたくしがどれほどつらい想いをしていたか、知っているでしょう?」
黙りこむヒューバート。
一瞬の静寂の中に、王妃殿下のひと言が重々しく響いた。
「……お黙りなさい」
そして、エマを静かに見遣る。
「わたくしが調べさせたところ、アーリアのいやがらせを証言したのは、王立高等学園の一部の男子学生だけだとか。その殿方はみな、あなたとかかわりがあることもわかっています。どのようなつながりか、今、明らかにしましょうか?」
「違います! そんなの嘘です。誰かがわたくしを陥れようとして……」
「そうね。そういう罠もあるかもしれませんね。たとえばアーリアのことも、誰かがアーリアをおとしめようと、悪意のある噂を流したのかもしれない。噂の出どころは一体どこなのでしょうねえ、ヒューバート?」
エマは押し黙り、ヒューバートは諦観の表情を浮かべていた。
王妃殿下は優雅に微笑んでいるけれど、その瞳は獲物にとどめを刺す狩人のようだった。この女性は、王宮内で一番怒らせてはいけない人なのかもしれない……。
その時、ヒューバートに押さえられて、なんとか沈黙を保っていたエマがついに爆発した。
「エマ、やめるんだ」
「いいえ、やめません。わたくしはもう侯爵家の人間で、あなたの正式な婚約者ですのよ。元平民だからと言って、不当に扱われるのはおかしいわ」
「元平民かどうかは今は関係ない。侯爵令嬢なら侯爵令嬢らしく振る舞うのだ」
「そうよ、わかっています。わたくしは侯爵令嬢。アーリア様が身分をかさに着て、わたくしをいたぶっていたことを、公明正大に裁ける立場なのよ!」
「…………」
「ね、ヒューバート。あなたもあのころ、わたくしがどれほどつらい想いをしていたか、知っているでしょう?」
黙りこむヒューバート。
一瞬の静寂の中に、王妃殿下のひと言が重々しく響いた。
「……お黙りなさい」
そして、エマを静かに見遣る。
「わたくしが調べさせたところ、アーリアのいやがらせを証言したのは、王立高等学園の一部の男子学生だけだとか。その殿方はみな、あなたとかかわりがあることもわかっています。どのようなつながりか、今、明らかにしましょうか?」
「違います! そんなの嘘です。誰かがわたくしを陥れようとして……」
「そうね。そういう罠もあるかもしれませんね。たとえばアーリアのことも、誰かがアーリアをおとしめようと、悪意のある噂を流したのかもしれない。噂の出どころは一体どこなのでしょうねえ、ヒューバート?」
エマは押し黙り、ヒューバートは諦観の表情を浮かべていた。
王妃殿下は優雅に微笑んでいるけれど、その瞳は獲物にとどめを刺す狩人のようだった。この女性は、王宮内で一番怒らせてはいけない人なのかもしれない……。