【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
旦那様は十歳年下の男の子
「ここまで、本っ当に、長かった……」
彼は少し遠くを見つめながら、しみじみとため息を吐いた。
ようやく王立高等学園に入学したばかりの少年らしくもない、深い感慨にひたっているのは、まだ年若い夫だ。
そう、夫。
わたしの……旦那様。
まさに今日、結婚式を挙げたわたしとセドリックは、正式に夫婦となった。
王国の春、花のさかりである。
貴族として最低限体裁を保てる、一年間の婚約期間。ぎりぎりその春秋を越えてはいても、セドリックの年齢を考えたら早すぎる結婚だ。
王立高等学園の一年生。
適齢になった貴族の子女は全員入学することになっていて、それは王族も例外ではない。第三王子のセドリックも同様で、今年は最年少の既婚の学生が誕生したということになる。
「アーリア、疲れた?」
少し癖のある短めの金髪に、大きく澄んだ青い瞳。
天使のような美少年ぶりは変わらないけれど、一年前よりもだいぶ背が伸びた。
セドリックと出逢ってから六年と少し、ずっとわたしが見下ろしていたのに、今はもう目線が同じくらい。きっとすぐに追い抜かれるだろう。