【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
旦那様は十歳年下の男の子


「ここまで、本っ当に、長かった……」

 彼は少し遠くを見つめながら、しみじみとため息を吐いた。

 ようやく王立高等学園に入学したばかりの少年らしくもない、深い感慨にひたっているのは、まだ年若い夫だ。

 そう、夫。
 わたしの……旦那様。

 まさに今日、結婚式を挙げたわたしとセドリックは、正式に夫婦となった。
 王国の春、花のさかりである。

 貴族として最低限体裁を保てる、一年間の婚約期間。ぎりぎりその春秋を越えてはいても、セドリックの年齢を考えたら早すぎる結婚だ。

 王立高等学園の一年生。

 適齢になった貴族の子女は全員入学することになっていて、それは王族も例外ではない。第三王子のセドリックも同様で、今年は最年少の既婚の学生が誕生したということになる。

「アーリア、疲れた?」

 少し癖のある短めの金髪に、大きく澄んだ青い瞳。

 天使のような美少年ぶりは変わらないけれど、一年前よりもだいぶ背が伸びた。
 セドリックと出逢ってから六年と少し、ずっとわたしが見下ろしていたのに、今はもう目線が同じくらい。きっとすぐに追い抜かれるだろう。

< 60 / 113 >

この作品をシェア

pagetop