【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
隠しキャラ登場!
「アーリア妃殿下、王立高等学園理事長就任おめでとうございます」
「ありがとうございます……」
学園管理棟の最奥、重厚な内装の理事長室で、わたしはセドリックに付き添われて挨拶を受けていた。
相手はこの学園の学園長、エドワード・モンクリーフ伯爵。
広い領地を持つ侯爵家の長子で、現在は侯爵家の持つ爵位の一つである伯爵を名乗っている。
学園のトップという地位にあるけれど、まだ若い。二十代後半……三十前後かしら。
青みを帯びた短い黒髪は、少しくせっ毛。瞳は髪と同じ黒で、元日本人のわたしには馴染みやすい。
けれど、顔だちはアジアンというより、ラテン? 大人っぽくて、セクシーな魅力にあふれている。
「モンクリーフ伯爵。いえ、学園長様とお呼びしたほうがよいのかしら。理事長不在の間、執務の代行をしていただき、ありがとうございました」
もともと理事長は経営面の責任者で、毎日通勤してくるわけではない。実質的な采配は学園長に任されている。
わたしにとっては、これからもお世話になる人だ。
モンクリーフ伯爵はわたしの手を取り、指先にそっと口づけた。
「よろしければ、エドワードと。妃殿下のような美しい方と、これからともに過ごせるなど夢のようです」
「エドワード様……」
男の色気を漂わせた、余裕のある微笑み。