【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
すれ違う想い
「……お似合いね」
「年のころも、ちょうどよいのではなくて?」
「学園長様は独り身よね。大人は大人同士で結婚すればよろしいのに」
「セドリック様、お可哀想……。あんな年上の方と」
遠巻きにひそひそ話す女子生徒たちの声が聞こえた。
ささやきは、王立高等学園の理事長室から連れ立って出てきた、わたしとエドワードの背中に対して向けられている。
時刻は昼近くなっていて、わたしたちは並んで、学園の廊下を教員用の食堂へと歩いていた。
わたしはあとから行くと主張したのに、エドワードにエスコートすると言われて断りきれなくて……。
上気した頬を、誰かに気づかれてしまわないだろうか。
「……妃殿下」とエドワードが、わたしの耳もとに唇を寄せて、低い声でささやいた。
「あなたのあでやかさへの賞賛と妬みのようなものです。お気になさらず」
少女たちに年上すぎると貶められたわたしを慰めてくれたんだろうけど……それ、逆効果だから!
「きゃっ」
「いやらしいわ、不潔……」
と、女子生徒の抑えた叫び声がした。男子生徒たちも息を呑んで、わたしとエドワードを見ている。