【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
セドリックからの呼び出し
昼休みに偶然会った時のセドリックの様子が気になっていた。
わたしの名前を呼んだ、美しい少年の顔。
いつもは会うとすぐ笑顔を向けてくれるのに、あの時は無表情で。その後もエドワードとは義務的に話していたけれど、わたしにはひと言も話しかけてくれなかった。
……セドリックに誤解されているんじゃないかしら。エドワードとのこと……。
昼食のあと、理事長室で一人物思いにふけっていると、扉をノックする音がした。
「理事長、失礼いたします。セドリック殿下からのご伝言でございます」
セドリックから使者だった。使者は、セドリックの手紙を渡すと、すぐに戻っていった。
封を開けると、確かにセドリックの手筆だ。
手紙には『午後の最後の授業で、乗馬と剣の実践練習がある。そのあと体を清めてから帰るので、訓練準備棟の待合室で待っていてほしい』というようなことが書いてあった。
ほっとした……。
普段どおりの手紙。もしかしたら先に帰っているように言われるかと思っていたので、一緒に帰る気があるとわかって気が抜けた。
「訓練準備棟は、馬場の隣の建物だったわよね……」
わたしは何も疑問に思わずに、セドリックの授業が終わるのを待っていた。
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