【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
僕だけを見て、僕の声だけ聞いて
「……アーリア……」
息を呑む。
セドリックも目を見開き、わたしの姿を認めた。
「セド……リック……」
石壁に背をあずけたセドリックの首には、明るいオレンジ色の髪の少女がしがみついている。
昼休憩の時、セドリックに駆けよっていった、あの女子生徒だ。
「アーリア」
セドリックが、わたしにすがるような視線を向けた。
オレンジ色の髪の少女は一瞬動きを止めたが、わたしにチラリと挑戦的な目を向けると、より強くセドリックに抱きつく。
「セドリックさま、さっきみたいに口づけて……」
「違う……きみが無理やり……、あっ」
少女は花の蕾のようにみずみずしい唇を、セドリックの頬に押しつける。
「セドリックさま、年上の妻よりも、若い女の子のほうが可愛いっておっしゃってましたよね」
「そんなこと言ってない!」
女性を力ずくで振りはらうのをためらっているのか、セドリックは抵抗できないみたいで……。