悪役令嬢の復讐マリアージュ
「古っ!
しかも音痴か!」

「ひどっ」
ショックを受けながら、人事労務課に入ると。

えええっ!
まだ帰ってなかったのっ?
楓くんと目が合って、思わず立ちすくむ。

待って……
てことは、今の音痴な歌も聞かれたって事?
だから聞くに堪えなくて、そんな辛そうな顔してるの?
いやあ!恥ずかしくて消え去りたいっ。

「じゃっ、今度こそ戻りまーす」と去って行った大貴に、私も連れてって〜!と内心叫ぶ。

「ま、まだいたの?」

「……ん、やっぱり一緒に帰ろう?
同じ課にいながら先に帰るとか、夫婦仲を疑われるし。
邪魔なら、他の作業して待っとくから」

それってつまり、この課にいる間はそうするって事?
いやそれは困る!
今日だけならともかく。
待たれたら残業しにくくて仕事が溜まるし、楓くんの疲労も溜まるじゃないっ。

「悪いけど、一緒に帰るつもりはないわ。
同じ課でも立場が違うんだし。
その分家の事をしてくれてる愛妻家だって言えば、逆に夫婦仲アピールになるし」

「……わかった。
けど何もせずに愛妻家なんて言われたくないから。
代わりに、これから毎日マッサージさせて欲しい」

「はいっ!?」
なんでそんな発想になるのっ?
ていうか、楓くんにそんな事させられない!
< 182 / 344 >

この作品をシェア

pagetop