幼馴染みに彼女が出来ました!
「遅くなっちゃった!!芽生ちゃん急ごう!」
10時前にはお店を出る予定だったのに、練習に夢中で時間を過ぎてしまった。
あんまり遅くなるとお母さんに怒られてしまう。
白い息を切らしながら萌花と走って駅まで向かった。
「じゃぁ、またね。芽生ちゃん」
相変わらず、人形みたいに愛らしい顔をしている萌花はこの後、電車に乗ることになっている。
バスの席に腰かけて、窓から彼女の後ろ姿を見送った。
本当はこのバスに乗ればもっと早く家に帰れる筈なのに。
バイトが終わって家に帰った後、部屋からこっそりと隣の家を覗いていれば、イブが帰ってくるのは11時をまわっていた。きっと、私より1本、もしくは2本遅いバスに乗ってるのだと思う。
「大変なのにな……」
小さな独り言が溜め息と同時に漏れる。
何処で着替えてるとか知らない。だけど、萌花の姿で帰ってくる事は今のところは無い。本当は正体バレてるのに、私に隠すためにバスに乗らずに電車に乗るフリをしている。
もしかして、気付いてるよって言ってあげた方がいいのかな。萌花だって仕事で疲れてるだろうしーー。
なんて、ぼんやりと考えながら目を閉じた。