メメント・モリ
朝、わたしが目を覚ますと、四方を窓で囲まれた正方形の箱の中だった。一枚の布団はまだぬるく暖かかった。何も思い出せない。瞼が酷く重い。
箱の中を見渡すと、小さな冷蔵庫が置いてあって、妙に惹き付けられて、どうしようもなく悲しく思うのだった。その箱は不思議なことに、天井に扉がついていた。その扉を開ければ、きっとすぐに外に出られたはずだけれど、そうしなかった。何故だか、すべてがどうでもいいことに思えたからだ。
四つの窓が、東西南北の位置につけられていることは、早くに気がついた。カーテンのない窓から、太陽が昇るのと沈むのが見えた。月が昇って、沈んだ。そうしているうちに、わたしのお腹は何度かなって、胃が収縮したようで、きゅうとなった。草が生き生きと茂り、空は青かった。それでも、外に出ようとは思わなかった。
ある晩、わたしは倒れるように眠って、そして、獣のように冷蔵庫にあった食べ物を貪った。火を使うものがなくてよかった、とわたしは思った。ここには、コンロも、ましてや、火を起こすようなものが何もなかったからだ。
中には、作り置きのような惣菜ばかりが並んでいた。誰が作ったのだろう。自分が誰だかは分からないけれど、この中にあるものはわたしの好みの食べ物ではない、とそう思った。