メメント・モリ
箱の中はすることがなく、退屈であったから、わたしは四つの窓の内、東側の窓から外をただ眺めていた。そうしているうちに、涙が落ちてくることがあった。そういうときに、空気を吸うと、得体の知れない、苦しさが込み上げてくるのだった。そうなると、わたしは必ず薬指を握った。
ある日、わたしは冷蔵庫の奥でタッパーに貼られたメモを見つけた。目頭が熱くなって、喉がつっかえたようになった。そのまま落ちてきた涙にわたしは、堪らなく驚いた。何故だろう。酷く悲しい。
そのうち、わたしは、また、倒れるように眠ってしまった。誰かがわたしを読んだ気がしたけれど、自分の名前が分からなかったから、どうすることも出来なかった。ただ、ずっとその夢の中にいたい、とと思った。
窓の外に見える、青々とした草は、少し前よりもさらに青々とし、寧ろ、鬱蒼と生い茂る、といった表現が正しいように思えた。その生い茂った草の隙間から赤い実が見えた。懐かしさを覚えたけれど、どうでもいいことと思えば、もう、見向きもしなかった。
体は不思議な倦怠感を帯びていた。深く息を吐いて、吸った。収縮していた胃が広がったようだ。置いてあった惣菜は疾うに尽きて、もう、緊急用の保存食のようなものも、底を尽きそうだった。それでも、別にいいと思った。何故か、自分の命に興味がなかった。それでも、本能のように食べ物を口にしたのは、何かの命令だったのかもしれない。自分から生を絶たなかったのも、そういうことなのかもしれない。