メメント・モリ
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四方を窓に囲まれたこの箱で迎える朝は、いつも目を窄めなければならなかった。もしくは、一枚だけの布団を頭から被る必要があった。カーテンくらい有れば良かったのに、とわたしは何度か思ったけれど、それをつける手段は無かった。わたしは、やっぱり外には出られなかった。
草の長さが、窓にかかるようになった頃、わたしは、冷蔵庫の裏に落ちている紙のようなものを見つけた。手触りですら、懐かしい。それは、夢だった。けれども、涙は止まらなかった。
わたしは、その紙に写っている、わたしの隣に立っている男性を、知っているのだ。何故忘れてしまったんだろう。いいや、忘れてしまいたかったのだ、あのときのわたしは。
彼は、わたしの恋人だった。