メメント・モリ

彼は、前から引越しの用意をしていたようだった。新しい家が既に用意されていたのだ。新しい家は、二人だけで生活するために作られたような小さな正方形の家だった。四方を窓に囲まれていて、そして、何故だか、扉が天井についていた。彼に、どうして、と尋ねたけれど、彼は笑うばかりで答えてくれなかった。きっと、冗談好きだったから、少しのお巫山戯だったのだろう。


わたしたちは、そこで自給自足をしようとしていたから、手軽に育つトマトの苗とナスやピーマンなんていう、小学生の生活科で植えたようなものを買っていった。園芸初心者のわたしたちにはぴったりだった。すぐに芽を生やして、成った実をとると、台所がなかったので、外で調理した。

わたしは相変わらず、外に出るのが怖くて、彼と一緒でないと外には出れなかったけれど、その時間がわたしはとても幸せだった。


最近、草が生えるのが早くなったと思った。わたしと彼は、よく草刈りをしていたからだ。彼は、本当に必要なものを買うために、時々街へ出ているようだった。彼は、わたしに一緒に来て、とは言わずいつも一人で行ってしまった。わたしはそれがとても怖かった。

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