ときめきの香りは貴方ですか?
「えーっと・・・実は今まで恋愛したことないの」
『えー!!』

なっちゃんと、龍太が声を合わせて私の顔を見た。
「そ、そっかぁ、びっくりしてごめん。そうだな、そうだよ!これから恋愛すればいいんだから、なっ!なっちゃん」

「そうよ!今まで愛里ちゃんがいいって思う人に出会わなかっただけだから、ねっ!愛里ちゃん」
龍太となっちゃんの優しさが余計心に突き刺さる。

「2人ともありがとう」
そう答えたあと、あの日のことを思い出した。

「あっ、でも・・・1人だけときめいた人がいたよ」
『誰??』
2人は身を乗り出して聞いてきた。

「うん、実はね、ここの1次面接受けに来る時に、スーツを着て、青の文字盤の腕時計をした男性が横に座って、少しだけ話をしたんだけど、その人の香水の香りにどきどきして・・・忘れられないんだ。今でも、街で同じ香りがする人とすれ違うと、思わず振り向いてしまうの。ここの従業員だって言ってたんだけど・・・」

「えっ?その人うちの従業員だったの?誰、誰?」

「それが、私、顔見てないし、声も車の音とかと混ざってたから。今日、永富さんと各部署回って挨拶したんだけど、同じ香りがする人や腕時計してる人も居なかった。」

「そっかぁ、まぁ、本当にここの従業員かもわからないしね。うん、でも愛里ちゃんがどきどきする経験したなら良しとしよう」

なっちゃんは、笑顔で慰めてくれた。

そっかぁ、考えもしなかった・・・
嘘をつかれたってこともあるんだ。
そうだな、そう言って力づけてくれたかもしれない。
嘘でも私にとっては大切な思い出だ。
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