薄暗い水辺で、私は彼を思う
「ちょっと、噂の池にね……」
「池?」
私は何のことだか分からずに、首を傾げて不思議顔。
放課後の帰り道、女子高生が一人で池に行くなんて不自然すぎる。
梅雨の合間に、晴れてる今日がよかったのかな?
太陽も沈んで暗くなった時間帯、ちょっと涼しくなって活動もしやすいしね。
なんて考えてたら、隣に立っていた先輩が声を上げた。
「まさか、お前の仕業か!春日 椿!」
「鋭い直感、さすが先輩」
大きな声を出して驚く先輩。
顔の表情を引きつらせ、何かに怯えてる様子。
先輩が右手を振るわせながら、指先を春日に向ける。
「どうしたの先輩……」
私の問いかけに、先輩は恐る恐る答えた。
「アイツの髪を見ろ……」
「椿の?」
私は視線を春日に向けて驚愕する。
「あっ、その髪!なにがあったの!」
よく見ると、毛先が腰まであった長い黒髪が……
肩に少しかかる程度の長さで切り落とされていた。
月明かりに照らされて、妖艶にほほえむ春日が口を開く。
「せいぜい苦しむといいわ、先輩……」