薄暗い水辺で、私は彼を思う
episode 03 顔色を変えた先輩


 梅雨の季節が始まったぐらいから、お腹がチクチク痛むと先輩が言ってた。

 季節の変わり目だから、体の調子が悪いんだねって話し合ってたのを思い出す。

 あれが、春日の仕業なんだとしたら、いったい……


「みんな、おはよう!」


 翌朝、春日を見たクラスメイトが、みんな驚いて周りを取り囲んだ。

 毛先が腰まであった黒髪を、バッサリと切った姿は別人みたい。

 本人は夏で熱いから短くしたと言ってたけど、ほかに理由があることは明白だ。


「髪を切ってイメチェンしたんだけど、変かな?」


 涼しそうな夏服の制服と合わせて、すごく可愛くなったのが好印象に見える。

 さっそく男子が、目の色を変えて話かけてるのを目にする。


「気に入ってくれたの、良かった!」


 何かが憑依した、妖艶な顔つきは教室で見ることはない。

 クラスメイトが知らない別の顔を、私と先輩は共有してる。



 朝のホームルームが始まる前の時間帯。

 クラスメイトが自分の席に座って、周りの人たちと談笑してる時。



 先輩が顔色を変えて、教室に姿を見せた……




< 11 / 35 >

この作品をシェア

pagetop