薄暗い水辺で、私は彼を思う


 私への怪異は続いた。

 スマホは家に置いて、持ち歩かないようにしてる。


 翌日、学校のトイレにいって、便座の蓋を開くと……

 腕が出てきた……


「きゃぁぁ!」


 驚いて、思わず悲鳴をあげてしまう。

 水が溜まってる部分は小さいのに、容赦なく私を追い込んでくる。


「だいじょうぶ、花田さん!」


 周りにいた女の子たちが、助けにきてくれた。

 個室に向けて指をさす私を見ると「変質者か盗撮!」などと騒ぎながら中を見回してる。

 何でもないよ、と声をかけられ一安心。

 でも、手が出てきたなんて言えないし……


「見まちがいだね、疲れてるんだよ。猛暑で体調を崩しやすい季節だし」


 念のため、保健室へ行って安むことに。


「先生いないね、ちょっと職員室に行ってくる」


 私、一人になってしまった。

 ちょっと、心細くて不安になってしまう。


 トイレの中で大きな声で叫んだから、喉が乾いた。

 透明のコップを手に取り、洗面台へ向かう。

 蛇口の下にコップを置き、レバーを開くと水が出てくる。


 コップに半分くらい水が溜まると、止まってしまった。


「あれ、どうしたのかな?」


 のぞき込むと、すぐに水は出てきたけど……



 その中に、長い髪が混ざっていた……




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