薄暗い水辺で、私は彼を思う


「神事の時につかった盛り塩なんですけど、少量でも大丈夫です」


「はあ?」


「和紙に包んで、お守りの袋にいれときますね」


「それを、どうやって使えば……」


「持ってるだけで、いいんです」


 巫女さんが、首からネックレスみたいに吊り下げれるようにと、お守り袋のひもを長くしてくれた。

 私の首にお守り袋をかけて、両肩を優しくつかんでくる。

 そして、体を引き寄せると私を抱きしめてきた。


「もう大丈夫ですよ。今までつらかったでしょう、頑張りましたね」


 その言葉を聞いた私は、涙を流してしまう。

 安心したのと、この状況から逃れられると思ったら、頬に涙が伝って流れ落ちていた。

 でも、私を抱きしめてるのは、見た目が巫女さんでも同じ歳の女子高生。



 そう考えると、ちょっと複雑な気分だった……




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