薄暗い水辺で、私は彼を思う
「そうだ、一緒に写真を撮ってほしいな」
私は、スカートのポケットからスマホを取り出す。
「あのあの、いいですけど約束してください!」
「えっ、どんな約束?」
「SNSで拡散したり、他人にあげたり、それから……」
「私だけ、記念に保存したいの。約束する、信じて」
「わかりました、信用します」
笑顔で引き受けてくれたけど、過去に嫌な思いでもしたのかな?
こんなに美人の巫女さんと、一緒に撮った画像だったら……
気持ちは分かるけど、約束は守ろう。
お互いの肩を寄せ合い、自撮りして画像を保存した。
「そのスマホ、ちょっと借りていいでしょうか?」
「はい、別にかまいませんけど……」
私がスマホを差し出すと、手に持って画面の裏に何かを張り付けてる。
難しい漢字がたくさん書いてあるシールを見て、私は首を傾げた。
「それって、なに?」
「これは、霊府みたいなものです」
「そうなんだ、ありがとう……」
よくわからないけど、私は黙って見つめてるだけ。
作業を終えて返してもらったスマホ、その裏面に張り付けた霊府シールを見つめる。
スカートのポケットにスマホをしまうと、私は簡単な自己紹介をした。
「私は、花田 鈴。もしよければ、名前を教えてほしいな」
笑顔を見せながら、彼女は優しい口調で話し始める。
「わたしは、綿貫 弓子。名前の由来は、神事に使う破魔弓からきてます。何かあったら、またきてください。綿貫神社で花田さんをまってますよ」
頼もしい同級生の子と仲良くできて嬉しい!
神事に使う破魔弓が名前の由来って、すごく強そう!
心強い美人の同級生に、病んでいた心を救われたよ……
「ありがとう、綿貫さん!」
「花田さんも、頑張ってくださいね……」