薄暗い水辺で、私は彼を思う


 などと考えていたら、草や周りの木がザワザワ揺れ始めた。

 風は吹いてない、池の水面も小さく波打ってるだけ。


「あっ、月が雲に隠れてく……」


 周りを明るく照らしていた、月明かりが雲に遮断され始めた。

 辺りが薄暗くなってくるのと同時に、草や木の揺れもおさまってくる。

 水面の小さな波が静まっていくのを見ながら、私は心を落ち着かせた。


 ――次の瞬間!


 「きゃっ!」


 驚きで声を上げてしまう。

 誰かが私の両肩を、背後から力強く掴んでるからだ。


「うそでしょ……」


 水に濡れた長い髪が、私の頬にふれて鳥肌が立つ。

 息づかいも感じられて、背筋が凍ってしまう。


「池から出てくる動画は、アナタじゃないの……」


「……」


 答えてくれるなんて思ってないけど、勇気を出して聞いてみた。

 私の肩を掴む手から、水が滴り落ちて制服が濡れていく。

 ブラウスとサマーセーターを浸食し、水の冷たい感覚が肌に……



 ――その時!




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