薄暗い水辺で、私は彼を思う
四つん這いで迫ってくる怪異は、私に向かってくる。
ここで逃げ出したら、ずっと水で苦しめられるのは明白だ。
スマホの画面で見た姿と同じ動きで歩み寄ってくる。
きっと、あの画像を見て苦しんでる人は私の他にもたくさんいるだろう。
「今日で、すべてを終わらせたい!」
強い覚悟と決心があっても、どうしていいか分からない。
綿貫さんは、何もしないで黙ってるだけでいいと言ってたけど……
怪異が近付いてくるたびに、胸のお守りが熱くなってくる。
「もう、我慢できない!」
私はブラウスの胸元に手を入れて、お守り袋を掴み出した。
「うそ……」
見ると、お守り袋が赤く血で染まりながら熱を放出してる。
「どんな時も手放さないで、強く握り締めてください」という言葉が脳裏に浮かぶ。
私は力強く、お守り袋を両手で握りしめていた。
「熱いよ綿貫さん、火傷しちゃう……」