薄暗い水辺で、私は彼を思う


「そっか、そうなんだ……ふっふふふ……」


 口元を吊り上げ、視線を下げて不気味に笑う春日。

 胸元で両手を重ね合わせ、体を震わせてる。


 優しい笑顔しか見たことのなかった私は、ちょっと背筋に悪寒が走った。

 直感で嫌な気配を感じ取る。


 春日は、私たちの関係を怒るどころか現実逃避してる印象。


「先輩……ゆるさないから……」


 春日が小声でブツブツと何かを言い始めた。


「ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさなぃ……ぜったいに……」


 窮地に追い込まれて精神崩壊していく春日に、先輩が酷い言葉を飛ばす。


「なんだよ、うるせ~な!お前、気持ち悪いんだよ!」

 ちょっと、それは言い過ぎだと心の中で思っていた。

 でも、つき合ったばかりで先輩に嫌われたくない私は何も言えない。


 春日の気持ちは痛いほどよくわかる。

 別れた元カレが、すぐに別の彼女を作ってショックだよね。

 それが、幼なじみの私だったら……



 気が狂いそうになる……




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