✾~クールな天才脳外科医と甘~い極上の結婚を~✾
対して彼は、取り乱す事なくいつも通り淡々と返してきた。

単純ですぐ感情的になる私は、いつも冷静沈着で緊張等した事ないと言うメンタル最強の彼を尊敬していたけれど、"本当ならもっと熱く返して!でも本音は、紫音の為でしょ?"
そう苛付き思い切り顔でブーイングを返した。


「お前もそう思って承諾したんだろ? ……まさか俺に言われたからって事ないよな? 憧れの待ち焦がれた一大イベント、運命の分岐点を他人軸で決めないよな? それと『この先ずっと紫音の傍にいてやってくれ。あいつとならきっと幸せになれるはず』と言ったんだ。勝手に短縮したら微妙に意味変わるだろ」


「……」


今までも私が感情的になると、超ドヤ顔で正論をかまされグーの音も出ない。

脳みそ超高速回転で記憶力抜群の彼には、何言っても論破され勝ち目はない。

悔しいけど、いつも真っ直ぐ正直な朝陽君が好きだから仕方ない。

もう気力マイナスの私は、"逃げるが恥だが楽になる"を選択した。


「離して。……お願い」


「…………莉子!」


朝陽君は、俯き小声で懇願する私をすぐ解放し、スッと立ち上がり力無く玄関に向かう私を慌てて呼び止めた。


「俺は、自分の意思で記入しここに来た。お前を誰より幸せにする為に」


強い意思と決意の込められた言葉につい立ち止まるけれど、悲しくも生涯片想いと確信していた私は素直に信じられず背を向けたまま嘲笑うように唇を歪めた。


「お願い。……一人にして」


私は、泣くのを必死に我慢しながら早足で外へと逃げ出して行った。
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