夜を照らす月影のように#2
「……やっと最終章だ……」

そう呟いて、僕は伸びをする。

最近、ずっと部屋にこもって、手を動かしてるから疲れたな……。

そう考えていると、コンコンコン、とドアをノックする音が響いた。

「はーい」

僕が返事をすると、ドアが開いて僕の義理の兄のリオンが姿を見せる。リオンは、現在イラストレーターとして活躍している。

リオンの絵は、驚くぐらい上手い。デジタルのツールを駆使して描いたんじゃないかってくらい。この世界には、デジタルなんてものはないけど……。

僕は、壊滅的に絵が下手だからね。絵が描けるリオンが羨ましいや。

「……ノワール、気分転換に散歩しない?」

「……良いよ」

僕はそう返事をすると、椅子から立ち上がった。



「……」

温かい風が吹いて、僕の着てるローブを揺らす。その風が心地良い。優しくて、温かい……。

「気分転換になるね」

僕の隣を歩くリオンを横目に見ると、リオンはぐっと体を伸ばしていた。

「……うん」

僕は、そう返すと立ち止まる。前世での唯一の友達のことを思い出したんだ。

「……ノワール?」

リオンは、立ち止まると僕の方を心配そうに見つめる。

……何だか、胸が苦しいなぁ。彼に、会いたい……。

「……ごめん、何でもない」

そう言って、僕は笑顔を作った。
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