夜を照らす月影のように#2
「……ノワール……?ノワールって、あの!?」

何回か僕の名前を呟いたエリカさんは、僕の手を掴んで目を輝かせながら僕を見た。

「私、将来小説家になりたくて……ノワール先生に憧れているんです……!まさか、ノワール先生にお会いすることが出来るなんて……!」

そう言って、エリカさんは嬉しそうに笑う。その笑顔が、僕の前世での友達の笑顔と重なった。

「……」

寂しいな。彼に、会いたい……。

この世界に来て、リオンに出会って、温かいリオンの両親に育ててもらって……幸せなはずなのに、何かが物足りない。

きっと、彼がいないからだ。

「……ありがとうございます」

作り笑いを浮かべて、エリカさんにお礼を言う。

「……そうだ。リオン……この世界にいる物の怪の親玉を倒さないと、元の世界に帰れないみたいだ」

そう言ってから、僕から手を離したエリカさんに今起こっていることを説明した。

「……ちなみに、エリカさんが閉じ込められているこの本のタイトルは、海色の魔法使いといいます」

「海色の魔法使い……!?捨て猫に優しくしていた主人公が、その主人公に恋をした王子様と結婚する話ですよね!」

「はい。とりあえず……親玉を見つけないことには帰れないので、この世界を探索してみましょうか」

僕の言葉に、2人は頷いた。
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