伝説の男、黒崎天斗!

伝説の男、黒崎天斗!第16話

理佳子は通話ボタンを押す。

「もしもし?薫?」

理佳子は複雑な心境の中電話に出る。

「理佳…今日はごめんね…ちょっと急に体調崩しちゃって…」

薫はまさかその場に天斗が居るとは思いもよらず理佳子に昼間のことを詫びるつもりで話し出した。

「ごめん、ちょっと待ってね」

そう言って天斗にジェスチャーでごめんと顔の前に手を上げて立ち上がり部屋を出て廊下、階段の降り口手前でもう一度電話を持ち直し

「ごめん、薫?大丈夫?」

「うん、そんな大したことじゃないから。あのあと小山内が家まで送ってくれてさ…あいつ…けっこう良いやつなんだよね」

薫はそう言いながらも何か別のことを考えてるような、言葉に迷いがあるような感じで声に力がこもっていないように感じた。理佳子は当然薫の気持ちに気付いている。理佳子は意を決して切り出す。

「薫…私ね、薫のことが手に取るようにわかってる」

そう言われたとき薫は胸が締め付けられるような気持ちになった。理佳子にしても薫にしても姉妹のように育って来たからお互いがお互い相手の思考や気持ちは解りすぎるぐらいわかってしまう。それを知ってるが故に理佳子には全て見抜かれていることも辛い。

「理佳…そうだよね…理佳には何も言い訳する必要もないんだよね…」

「薫…ねぇ薫…薫はたかと君を通して彼のことを見てるんでしょ?」

薫は鋭すぎる理佳子の洞察力に脱帽する。

「理佳…」

「薫?私ね…いつもいつでも薫がどんなことでも私を優先して私の為にしてきてくれたことはずっとずっと感謝している。だから、薫の為なら私どんなことでも協力するし、どんな努力だって惜しむつもりはないよ…でもね…」

薫はそれ以上理佳子の口から言われるのが辛くて理佳子の言葉を遮り

「理佳…大丈夫だよ。心配しないで…理佳子の大切なものは私にとっても…だから何も心配しないで」

「薫…」

「理佳…私さ…彼のことをもう私の中から消そうと思ってる。だって…辛いもん…いつまでも亡き人を想い続けるのは…私さ…凄く私を想ってくれるやつ現れたから…なんか忘れられそうな気がするんだ…」

「薫…」

理佳子は薫の中に迷いがあることはわかっている。しかし確かに薫の中で何か自分で自分を鼓舞し前へ進もうとしている手応えもまた感じ取っていた。

「薫?小山内君…凄く真っ直ぐな人だよ。私にはわかる。ちょっと不器用なところもありそうだけど、真剣に薫のことが…」

「わかってるよ…あいつ…バカだけどそこそこ喧嘩もやるやつでさ…告白されて返事待たせてるんだけど…今度ちゃんと答えようと思ってるんだ。」

昼間の薫とは全く気持ちに変化を感じていた。きっとまた私の為に自分の中で気持ちに整理を付けて薫は電話をくれたんだ…その自分の中の気持ちを自分自身に言い聞かせる為に今こうして話してくれたんだね…ありがとう…薫…

「そっか、おめでとう…薫」

「フフッ…ありがとう…」

電話を切って理佳子は天斗の部屋に戻る。

「ごめん、薫大丈夫だって。小山内君ちゃんと薫の家まで送ったって」

「そっか、それなら良かったけど。なぁ、理佳子…前に言ってた思い出して欲しいことってなんだったんだ?」

「フフッ…別にそんな大したことじゃないから」

また理佳子はそうやって思わせ振りな態度を取る。

一方薫は

理佳には強がってあぁやって言ったけど…そんな簡単には気持ちなんて切り換えられるもんじゃないんだよなぁ…薫は机に向かい両腕を机に乗せて伏せている。
小山内に対しての気持ちに嘘も偽りも無いのだが、それでもまだどこか整理しきれない気持ちが薫の胸を締め付け続ける。

「バカヤロウ…何でたかとはアイツに似てるんだよ…」

かおりちゃん…今日はほんと不思議だったなぁ…まさか、かおりちゃんからキスして来るなんて…いやでも、あの掴み所の無いフワフワ感が堪んないんだよなぁ~。でも、これでかおりちゃんの家もわかっちゃったし…いつかかおりちゃん家で…小山内は自分の部屋で布団に寝転んで今日の出来事を思い出してニヤニヤしている。薫との妄想に頭の中はピンク色に染まっていた。
小山内…私を抱いて…
かおりちゃん…
そっと薫を抱きしめ唇と唇を重ね合わせる。それから俺はかおりちゃんの首もとに舌を這わせた時かおりちゃんが思わず吐息を漏らす…そして徐々に俺の舌は首もとから胸の方へ下がって行き…

「清~ご飯出来たよぉ~」

母ちゃん…ナイス!これ以上行ったら俺鼻血出るところだったわ!

「はぁい」

小山内もまたバッドタイミングな邪魔にピンク色のハートを打ち砕かれるのであった。

時刻は既に18時30分を回っていた。天斗の家の一階部分では話し声と物音が聞こえて来る。天斗の父親が仕事を終え帰宅したようだ。天斗の父親は大手自動車販売店の経理をしている。たまに残業もあるがわりと定時に帰ることが多い。それほど口数が多い方では無いが、かといって寡黙なタイプというわけでもない。下から母さんの声が聞こえて来る。

「理佳ちゃーん、天斗~ご飯よぉ~」

俺と理佳子は

「はぁい」

と返事をして階段を降りていき食卓テーブルを囲んだ。親父が理佳子に話しかける

「理佳子ちゃんいらっしゃい。ずいぶんとべっぴんさんになったねぇ」

母さんも割り込んで

「ほんとよねぇ~、あんなにちっちゃくて見えないぐらい小さかった女の子がこんなに女らしく成長してビックリだよ」

理佳子は恥ずかしそうにうつ向いている。

「天斗のお嫁さんになってもらう為に今のうち理佳ちゃんのご両親も取り込んでおかなくちゃね」

母さんが言うと

「でも、天斗にはちょっと勿体ないなぁ…こんなべっぴんさんにはもっと相応しい男も沢山居るだろうに…」

親父…余計なお世話だ!理佳子は絶対俺のもんだぞ!
夕飯を終え、理佳子を先に風呂へ入らせ俺は二階の部屋に戻った。その間にいつかこの日の為にと買っておいたコンドームをそっと枕に忍ばせる。今日こそは…今日こそは俺は大人の男になるんだ…理佳子…お前の全てを俺に預けてくれ…俺はエッチなシミュレーションを頭の中に描きまるで詰め将棋のように一人で最初から最後まで妄想に耽る。知識はずっと培ってきたから、あとは実践あるのみ!
今日こそは理佳子と本当の意味で…いや、ちょっといかがわしい意味で一つになるんだ!
その時理佳子が風呂から上がってきた気配が感じ取れる。俺は急いで風呂の支度をして階段を降りた。理佳子は湯上がりで少し顔を赤く染めて蒸気を漂わせ、ただでさえ色白な肌に映える血色の良さを更に色気を漂わせ立っている姿に俺は見とれてしまった。こ…この娘を…こんな可愛い娘を俺はこれから…若さゆえ想像力逞しい妄想が俺を発情させる。理佳子が親父と母さんに向かって

「お先にお風呂ありがとうございました。凄くいいお湯加減でした」

そう言って頭に巻いたタオルをほどいて礼を言う。
親父と母さんは理佳子の可愛さに見とれている。そして理佳子を先に俺の部屋に戻らせ俺はそのあとすぐに風呂へ入り急いで身体をまんべんなく洗い風呂を出て理佳子の元へ戻る。理佳子は俺が用意してあったドライヤーで髪を乾かし終えたところだった。

「理佳子…パジャマとか無いけど大丈夫か?」

「うん、おばさんからお姉さんの服とか下着をお借りしたから大丈夫だよ」

「そっか」

理佳子は人の使った下着とか服とかあまり気にしないのか…てか今身に付けてる下着は姉ちゃんのかよ…それはそれでちょっと引くなぁ…これは減点1だな…俺は時計を見る。まだ20時を少し回ったところだ。野獣になるにはまだ少し早いな…ちょっとテレビでも適当に見てもう少し時間ずらすか…俺は野獣のごとき闘争心を内に隠し理佳子とバラエティー番組を見ながら理佳子をチラチラ見ている。
やっぱり可愛い…もう頭ん中がエッチな方に向きすぎて何も集中出来ん…この時間が辛すぎる…理佳子はどうなんだろう…普通にテレビ見ながら笑ってるけど…この後の俺の計画は理佳子の中では想定済みなんだろうか?ダメだ…ムラムラして我慢出来ん…俺はさっきシミュレーションしていた妄想をどのタイミングで実行に移そうか思案していた。理佳子と俺はベッドに並んで座っている。俺は左手をそーっと理佳子の背後、腰の辺りから伸びて理佳子の左のお尻辺りに忍び寄る…そして理佳子は俺の方を振り向く。
俺は今原始的な欲求に呑み込まれて半分理性を失っている。もはや今の俺は盛った獣の雄でしかない。これから踏み出そうとしている未知の世界に俺の鼓動、脈打つ激しさはこのまま死を迎えても決しておかしく無いほどの勢いで、これが最期だとしても本望…俺は目の前のこの恐ろしいほど健気で可愛い少女を汚そうとしている。理佳子…お前の全てを俺に…俺を見つめる理佳子の瞳は緊張と不安で定まらない。俺の右手が理佳子の左頬に優しく触れる。俺はそっと理佳子の顔に俺の顔を近づけていく…理佳子はギリギリまで目を閉じない。俺は理佳子の薄くて紅い唇にそっと口づけをする…理佳子は目を閉じたまま受け入れる。そして俺は大人のキスを試してみた…

「たかと君…テレビと電気消して…」

理佳子が消え入りそうなほど小さな声でそう言った。俺はリモコンでテレビの電源を切り、立ち上がって壁のスイッチを押し電気も消した。急に暗闇になって目が慣れないまま感を便りに理佳子の隣に戻った。

それから20分ほど経って俺はベットに座り込んで肩を落としている…理佳子が…

「たかと君…大丈夫?」

理佳子は俺に心配してそう言ってくれたが、俺は男としてこんな大事な局面で男の機能を果たせなかった自分の身体を責めている…あのあと順調にマニュアル通りに行ってるように思えたが、最後のゴールイン間近というところで俺の野生の獣が意気消沈して機能を果たすことが出来なかったのだ…理佳子の身体を燃え上がらせるだけ燃え上がらせて途中下車してしまった俺のショックは計り知れない。理佳子もそれをどう感じているかまではわからないがとにかく俺を慰めてくれる優しさに俺が何とかプライドをギリギリの所で保つことに大きく貢献してくれている。

「理佳子…済まない…」

理佳子はそっと俺の身体に抱きついて包容してくれた。
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