伝説の男、黒崎天斗!
伝説の男、黒崎天斗! 第49話
「あぁ知ってるよ!先ずは佐々木日登美を解放してもらわなきゃ喋れねぇな!」
「オイ!調子に乗るなよ!俺達とお前は対等な立場でもないんだからな?」
「あぁ、十分わかってる!いい大人達がたかだか高校生相手にこんなに大勢で囲まなきゃならないほど小さい奴らだってな…」
「なるほど…お前なかなか肝座ってんな…卒業したらウチ来ないか?こいつらよりよっぽど使えそうだ!」
そう言ったのは芹沢だった。子分達はこれにムッとして
「くそガキ!さっさと言わねぇともう2度と家には帰られなくなるぞ!この意味がわかるか?」
「ハナからその覚悟で来てるに決まってんだろ!だが、佐々木日登美は家に帰してもらうぞ!お前らみたいないい大人が寄ってたかって少女に薬なんか売らせて…それを何の恥じらいもなく偉そうに…テメェらみたいな奴を見るとむしずが走るんだよ!」
「このガキ…おもしれぇことを言いやがる…ヤクザ相手に説教するとは…」
そう言って子分達は高笑いした。その時芹沢の上と見られる貫禄のある中年の男が現れた。
「君、なかなか面白いねぇ…いやぁ大したもんだ!君に免じてここは俺が収めてあげよう。どうだ?重森って女の子のことは諦めてあげる。その代わり佐々木日登美のことは君達も諦めてくれ!悪くないだろ?俺は山口という者だ」
「いいや、納得出来ない!こっちは何も譲歩する理由がない!」
「ハハ、いゃあ参ったな…こっちはいい条件出したと思ってるんだが…どうやら五体満足で帰りたく無いらしいね…」
「くたばれ!ドブネズミ!」
「いいねぇ…この世の怖さを知らない若者ってのは…昔を思い出すよ…俺達も向こう見ずにヤンチャしたもんだ!ヤクザ相手にだって怯むことはなかった時代もあったよ…」
「それ以上喋るな…お前らの言葉を聞いてると吐き気がする!」
「わかった!」
山口がそう言って芹沢に向かって首を振って
「殺れ!」
と一言
天斗と小山内が身構える。その時外が騒がしくなってきた。
「ん?何だ?ちょっと外の様子見てこい!」
山口と名乗った男が芹沢に言いつけた。
「はい!」
そう言って芹沢が素早く部屋を出ていこうとした時…
ボコォ~ッ
芹沢が物凄い勢いで部屋の中へぶっ飛んで来た。
そこにいた暴力団関係の男達が敵の奇襲かと思い一斉に懐から短刀に手をかける。
「何事だ!」
山口が怒鳴った!
「何だよ…ヤクザってのも大したことねぇな…拍子抜けだ!」
そう言って入ってきたのは伝説黒崎天斗だった。
この男…武田剛と名乗った男…いったい何者?天斗は奇妙な縁だと思い黒崎を見つめていた。
「おっ!黒崎じゃねーか!薫は無事か?」
伝説黒崎が天斗に向かって言った。
「お前…確か武田剛の亡霊だったよな…」
「ハハ、そういやそうだな…」
「何しに来たんだよ!」
「お前一人じゃ心細いと思ってな…駆けつけて見りゃ物凄い数が集まってるじゃねーか!」
「何?」
天斗と小山内が顔を見合わせた。そしてぞろぞろと見知った男達が天斗達の居る部屋に押し寄せてくる。
「何でお前ら…」
小山内が言った。
「とりあえずまだ生きてるみたいだな…」
仲間達がそう言った。
ヤクザ相手とはいえ、圧倒的な数の違いに高校生軍団が押していた。流石にこの状況に山口というヤクザ者も黙ってはいられず
「このガキ~!ブッ殺してやる!ヤクザをナメるなよ!」
山口が壁に掛けてある日本刀を掴み鞘に手をかけた!
たかと君…クリスマスイヴだよ…明日の予定どうなるの?まだ何も決まってないのに…やっぱり何かあったのかなぁ…
理佳子は自分の部屋の机の前で椅子に座り、肘を机上に乗せて写真たてに写っているたかとを見ながら独り言を言っていた。せっかくたかと君の為にクリスマスプレゼント用意したのに…理佳子はたかとの喜ぶ顔を想像しながら選んだプレゼントを渡す日を楽しみにしていた。それが自分に隠し事しているような、そして本来なら今日この日に会えてもおかしくない状況で何の連絡も無いことに落ち込んでいた。そしてその時…たかとから誕生日プレゼントと言って渡された木彫りの可愛いフクロウの壁掛けの飾り物が、ゴトンと音を立てて落ちた。理佳子がビクッと飛び上がった。たかと君…まさか…たかと君の身に何かあったの?あの時の胸騒ぎ…
そしてタカも理佳子の足元に来てミャア…ミャアオ…何か理佳子に語りかけているような鳴き方をした。タカ…教えて…たかと君の身に何が起きてるの?タカはただ理佳子に向かって何か訴えている。やっぱりタカも普段と違う…絶対おかしい…
一方小山内家では
「かおりん、そんなに心配?」
吟子は薫とリビングのテーブルを囲んで座っていた。
「お母さん…元はと言えば…」
「かおりん、あんたが落ち着かない気持ちはわかるよ…でも、あんたが行ったら余計に話がこじれて状況が悪化したりするってことはないかい?この前のトラブルの時みたいに…そしてみんなに心配かける…あんたはもう守ってくれる仲間が沢山いるんだろ?まぁ、今回の件は特別ヤバい山かも知れないけど、でも私が大丈夫って言ったら大丈夫さ!だからあんたをここに留めた。もしそうじゃ無かったら私が出てるさ!」
「お母さん…どうしてお母さんはいつも何もかもお見通しなの?どうしてそんなに全て解決してくれるの?」
「かおりん、くぐった修羅場の数も、人生経験も、かおりんとは比べ物にならないほど私も経験してる。こんなんでも一応人並み以上には苦労してきてるつもりさ!」
そう言って笑っている。何となく薫もそうなのかと思い始めた。その矢先…どこかで救急車のサイレンの音が鳴り響く。薫はその音に過敏に反応した。
「お母さん!」
「心配要らないって!どこかその辺で事故でもあったか何かだろ?」
「でも…」
「まぁ、そのうち嵐が去っていつもの日常生活が始まるよ…清が母ちゃんただいま~ってね」
それならいいんだけど…今この瞬間にも…誰かの身に何か起きてたとしたら…薫は胸騒ぎがして、いてもたっても居られない…
そして暴力団関係事務所では、日本刀の鞘を払った山口が、その白刃をキラリと光らせ天斗達に迫る!
「ここまでヤクザ者がコケにされたとあっちゃ、他の組にも示しがつかねぇよ…これもお前らがこんなド派手に暴れてくれたせいだ!悪く思うなよ!」
そう言って山口が日本刀を振りかぶった瞬間
「御免くださーい!警察の者ですがぁ~」
それは太くドスの利いた声だった。山口は慌てて日本刀を鞘に戻して壁にかけ直した。天斗達、高校生軍団は流石に一瞬日本刀にたじろいだが、救世主の声に胸を撫で下ろした。
「どうも、久しぶりだねぇ…山さん!」
警察と名乗った男の声だった。
「あっ…こ…これは…お久しぶりでした!」
天斗達が二人のやり取りを見ている。
「山さん!何か問題でも?」
「いや…なに…大したことはないよ…」
「でも、外には沢山あんたの若い衆が伸びてるみたいだが…他所の組が攻めて来たわけでもあるまい?」
「いや、なに…ただの仲間割れで喧嘩したから今止めに入ったところですぁ!」
「ほう?そんな珍しいことがあるもんかね?普通、こういう所は縦社会だろ?やっぱり何か問題が起きてんだろ?」
「拳さん…あんたも鼻が効くねぇ~…」
「山さん…もうわかってんだろ?何故俺が数年ぶりにここを訪れたか…あんたもいい大人だ!ここは話し合いで解決しようや!」
そう言って山口を庭に誘った。
「山さん…折り入って頼みがあるんだが…聞いてくれるかね?」
「そりゃ拳さんの頼みとあっちゃあ聞かないわけにはいかんでしょ?」
「そうかい…昔馴染みのあんたで良かったよ…山さん、ここは一つ穏便に終わらせたい!子供達を安全にここから帰してくれやしないかね?」
山口は一瞬事務所の中の天斗達にチラッと目をやり…
「拳さん、俺はハナからそのつもりでいたさ!ヤクザ者にも筋道ってもんがある…ちゃんと道理はわきまえてるつもりさ!」
「じゃあ、今後もあの子達には一切関わらねぇでくれるのかい?」
「そりゃもう彼らの身の安全は俺が保証するよ!心配要らねぇ!」
「いやぁ、流石は山さんだねぇ…男の中の男だ!昔のことを思い出すよ…あんたに会えて良かったよ…」
「そりゃ…どうも…」
山口は過去に吟子同様、この矢崎拳に何度も窮地を救われた一人だった。そして昔のことを引っ張り出されれば恥をかくのはこの山口なのだ…矢崎拳からこれ以上昔の話をされたくないと思っていた。
「拳さん!さ、あの高校生達皆連れてお引き取りください!」
天斗達はこの突然現れた堂々たる男のオーラに圧倒されていた。そしてこの男が何者なのかを知るのは、伝説黒崎と小山内、だけだった。
「山さん、本当にありがとう!いや、やはり本物ってのは違うもんだねぇ!」
矢崎拳が事務所の中に入ってきて
「おぉ、若人よ!なんて素晴らしいんだ!ヤクザ者相手にしても堂々と渡り合って…この先の未来はとても明るいねぇ!こんな肝の座った若者達が沢山いるとは!いや、素晴らしい!」
「オッサン!まだ監禁されてる女が一人居るんだ!そいつも連れて帰りてぇ!」
天斗が矢崎拳にそう言った。そこに立っているのがまさか本当の父親とも知らずに…
「おう?そうなのか?山さん、あんたも隅に置けねぇなぁ…若い女の子を監禁?そんなことして何をするつもりだい?俺達の時代にも色々あったが、あの時の気持ちは忘れたわけじゃあるまい…子供達ってのは社会が、大人達皆が育てるもんだ!次世代を担う若者の芽は摘んじゃいけないよ!そうだろ山さん?」
「お、おう…もちろんだ!」
「山さん、ましてや子供使って薬だの風俗だのなんて極道の道にも反するよ?そんな格好悪い大人にはなっちゃあいけねぇよな?」
「正にその通りだな!拳さん…」
「いや、ありがとうありがとう!話はここまでだ!じゃあな、山さん!あっ、そうそう…山さん!間に合って良かったよ!あんたが探してたっていう重森薫…あれは俺の娘な!」
そう言って笑いながら矢崎拳は玄関を出ていく。
えええええええぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!!
ここに居る高校生軍団…その薫を知る全ての者達が、今目の前に居た男が、あのじゃじゃ馬の父親だと知って驚きつつも納得がいった。そして、天斗達は佐々木日登美を奪還してこの事務所を後にした。この日、ここで矢崎拳を見た全ての高校生達が、大物の男の器というものを知った…
「オイ!調子に乗るなよ!俺達とお前は対等な立場でもないんだからな?」
「あぁ、十分わかってる!いい大人達がたかだか高校生相手にこんなに大勢で囲まなきゃならないほど小さい奴らだってな…」
「なるほど…お前なかなか肝座ってんな…卒業したらウチ来ないか?こいつらよりよっぽど使えそうだ!」
そう言ったのは芹沢だった。子分達はこれにムッとして
「くそガキ!さっさと言わねぇともう2度と家には帰られなくなるぞ!この意味がわかるか?」
「ハナからその覚悟で来てるに決まってんだろ!だが、佐々木日登美は家に帰してもらうぞ!お前らみたいないい大人が寄ってたかって少女に薬なんか売らせて…それを何の恥じらいもなく偉そうに…テメェらみたいな奴を見るとむしずが走るんだよ!」
「このガキ…おもしれぇことを言いやがる…ヤクザ相手に説教するとは…」
そう言って子分達は高笑いした。その時芹沢の上と見られる貫禄のある中年の男が現れた。
「君、なかなか面白いねぇ…いやぁ大したもんだ!君に免じてここは俺が収めてあげよう。どうだ?重森って女の子のことは諦めてあげる。その代わり佐々木日登美のことは君達も諦めてくれ!悪くないだろ?俺は山口という者だ」
「いいや、納得出来ない!こっちは何も譲歩する理由がない!」
「ハハ、いゃあ参ったな…こっちはいい条件出したと思ってるんだが…どうやら五体満足で帰りたく無いらしいね…」
「くたばれ!ドブネズミ!」
「いいねぇ…この世の怖さを知らない若者ってのは…昔を思い出すよ…俺達も向こう見ずにヤンチャしたもんだ!ヤクザ相手にだって怯むことはなかった時代もあったよ…」
「それ以上喋るな…お前らの言葉を聞いてると吐き気がする!」
「わかった!」
山口がそう言って芹沢に向かって首を振って
「殺れ!」
と一言
天斗と小山内が身構える。その時外が騒がしくなってきた。
「ん?何だ?ちょっと外の様子見てこい!」
山口と名乗った男が芹沢に言いつけた。
「はい!」
そう言って芹沢が素早く部屋を出ていこうとした時…
ボコォ~ッ
芹沢が物凄い勢いで部屋の中へぶっ飛んで来た。
そこにいた暴力団関係の男達が敵の奇襲かと思い一斉に懐から短刀に手をかける。
「何事だ!」
山口が怒鳴った!
「何だよ…ヤクザってのも大したことねぇな…拍子抜けだ!」
そう言って入ってきたのは伝説黒崎天斗だった。
この男…武田剛と名乗った男…いったい何者?天斗は奇妙な縁だと思い黒崎を見つめていた。
「おっ!黒崎じゃねーか!薫は無事か?」
伝説黒崎が天斗に向かって言った。
「お前…確か武田剛の亡霊だったよな…」
「ハハ、そういやそうだな…」
「何しに来たんだよ!」
「お前一人じゃ心細いと思ってな…駆けつけて見りゃ物凄い数が集まってるじゃねーか!」
「何?」
天斗と小山内が顔を見合わせた。そしてぞろぞろと見知った男達が天斗達の居る部屋に押し寄せてくる。
「何でお前ら…」
小山内が言った。
「とりあえずまだ生きてるみたいだな…」
仲間達がそう言った。
ヤクザ相手とはいえ、圧倒的な数の違いに高校生軍団が押していた。流石にこの状況に山口というヤクザ者も黙ってはいられず
「このガキ~!ブッ殺してやる!ヤクザをナメるなよ!」
山口が壁に掛けてある日本刀を掴み鞘に手をかけた!
たかと君…クリスマスイヴだよ…明日の予定どうなるの?まだ何も決まってないのに…やっぱり何かあったのかなぁ…
理佳子は自分の部屋の机の前で椅子に座り、肘を机上に乗せて写真たてに写っているたかとを見ながら独り言を言っていた。せっかくたかと君の為にクリスマスプレゼント用意したのに…理佳子はたかとの喜ぶ顔を想像しながら選んだプレゼントを渡す日を楽しみにしていた。それが自分に隠し事しているような、そして本来なら今日この日に会えてもおかしくない状況で何の連絡も無いことに落ち込んでいた。そしてその時…たかとから誕生日プレゼントと言って渡された木彫りの可愛いフクロウの壁掛けの飾り物が、ゴトンと音を立てて落ちた。理佳子がビクッと飛び上がった。たかと君…まさか…たかと君の身に何かあったの?あの時の胸騒ぎ…
そしてタカも理佳子の足元に来てミャア…ミャアオ…何か理佳子に語りかけているような鳴き方をした。タカ…教えて…たかと君の身に何が起きてるの?タカはただ理佳子に向かって何か訴えている。やっぱりタカも普段と違う…絶対おかしい…
一方小山内家では
「かおりん、そんなに心配?」
吟子は薫とリビングのテーブルを囲んで座っていた。
「お母さん…元はと言えば…」
「かおりん、あんたが落ち着かない気持ちはわかるよ…でも、あんたが行ったら余計に話がこじれて状況が悪化したりするってことはないかい?この前のトラブルの時みたいに…そしてみんなに心配かける…あんたはもう守ってくれる仲間が沢山いるんだろ?まぁ、今回の件は特別ヤバい山かも知れないけど、でも私が大丈夫って言ったら大丈夫さ!だからあんたをここに留めた。もしそうじゃ無かったら私が出てるさ!」
「お母さん…どうしてお母さんはいつも何もかもお見通しなの?どうしてそんなに全て解決してくれるの?」
「かおりん、くぐった修羅場の数も、人生経験も、かおりんとは比べ物にならないほど私も経験してる。こんなんでも一応人並み以上には苦労してきてるつもりさ!」
そう言って笑っている。何となく薫もそうなのかと思い始めた。その矢先…どこかで救急車のサイレンの音が鳴り響く。薫はその音に過敏に反応した。
「お母さん!」
「心配要らないって!どこかその辺で事故でもあったか何かだろ?」
「でも…」
「まぁ、そのうち嵐が去っていつもの日常生活が始まるよ…清が母ちゃんただいま~ってね」
それならいいんだけど…今この瞬間にも…誰かの身に何か起きてたとしたら…薫は胸騒ぎがして、いてもたっても居られない…
そして暴力団関係事務所では、日本刀の鞘を払った山口が、その白刃をキラリと光らせ天斗達に迫る!
「ここまでヤクザ者がコケにされたとあっちゃ、他の組にも示しがつかねぇよ…これもお前らがこんなド派手に暴れてくれたせいだ!悪く思うなよ!」
そう言って山口が日本刀を振りかぶった瞬間
「御免くださーい!警察の者ですがぁ~」
それは太くドスの利いた声だった。山口は慌てて日本刀を鞘に戻して壁にかけ直した。天斗達、高校生軍団は流石に一瞬日本刀にたじろいだが、救世主の声に胸を撫で下ろした。
「どうも、久しぶりだねぇ…山さん!」
警察と名乗った男の声だった。
「あっ…こ…これは…お久しぶりでした!」
天斗達が二人のやり取りを見ている。
「山さん!何か問題でも?」
「いや…なに…大したことはないよ…」
「でも、外には沢山あんたの若い衆が伸びてるみたいだが…他所の組が攻めて来たわけでもあるまい?」
「いや、なに…ただの仲間割れで喧嘩したから今止めに入ったところですぁ!」
「ほう?そんな珍しいことがあるもんかね?普通、こういう所は縦社会だろ?やっぱり何か問題が起きてんだろ?」
「拳さん…あんたも鼻が効くねぇ~…」
「山さん…もうわかってんだろ?何故俺が数年ぶりにここを訪れたか…あんたもいい大人だ!ここは話し合いで解決しようや!」
そう言って山口を庭に誘った。
「山さん…折り入って頼みがあるんだが…聞いてくれるかね?」
「そりゃ拳さんの頼みとあっちゃあ聞かないわけにはいかんでしょ?」
「そうかい…昔馴染みのあんたで良かったよ…山さん、ここは一つ穏便に終わらせたい!子供達を安全にここから帰してくれやしないかね?」
山口は一瞬事務所の中の天斗達にチラッと目をやり…
「拳さん、俺はハナからそのつもりでいたさ!ヤクザ者にも筋道ってもんがある…ちゃんと道理はわきまえてるつもりさ!」
「じゃあ、今後もあの子達には一切関わらねぇでくれるのかい?」
「そりゃもう彼らの身の安全は俺が保証するよ!心配要らねぇ!」
「いやぁ、流石は山さんだねぇ…男の中の男だ!昔のことを思い出すよ…あんたに会えて良かったよ…」
「そりゃ…どうも…」
山口は過去に吟子同様、この矢崎拳に何度も窮地を救われた一人だった。そして昔のことを引っ張り出されれば恥をかくのはこの山口なのだ…矢崎拳からこれ以上昔の話をされたくないと思っていた。
「拳さん!さ、あの高校生達皆連れてお引き取りください!」
天斗達はこの突然現れた堂々たる男のオーラに圧倒されていた。そしてこの男が何者なのかを知るのは、伝説黒崎と小山内、だけだった。
「山さん、本当にありがとう!いや、やはり本物ってのは違うもんだねぇ!」
矢崎拳が事務所の中に入ってきて
「おぉ、若人よ!なんて素晴らしいんだ!ヤクザ者相手にしても堂々と渡り合って…この先の未来はとても明るいねぇ!こんな肝の座った若者達が沢山いるとは!いや、素晴らしい!」
「オッサン!まだ監禁されてる女が一人居るんだ!そいつも連れて帰りてぇ!」
天斗が矢崎拳にそう言った。そこに立っているのがまさか本当の父親とも知らずに…
「おう?そうなのか?山さん、あんたも隅に置けねぇなぁ…若い女の子を監禁?そんなことして何をするつもりだい?俺達の時代にも色々あったが、あの時の気持ちは忘れたわけじゃあるまい…子供達ってのは社会が、大人達皆が育てるもんだ!次世代を担う若者の芽は摘んじゃいけないよ!そうだろ山さん?」
「お、おう…もちろんだ!」
「山さん、ましてや子供使って薬だの風俗だのなんて極道の道にも反するよ?そんな格好悪い大人にはなっちゃあいけねぇよな?」
「正にその通りだな!拳さん…」
「いや、ありがとうありがとう!話はここまでだ!じゃあな、山さん!あっ、そうそう…山さん!間に合って良かったよ!あんたが探してたっていう重森薫…あれは俺の娘な!」
そう言って笑いながら矢崎拳は玄関を出ていく。
えええええええぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!!
ここに居る高校生軍団…その薫を知る全ての者達が、今目の前に居た男が、あのじゃじゃ馬の父親だと知って驚きつつも納得がいった。そして、天斗達は佐々木日登美を奪還してこの事務所を後にした。この日、ここで矢崎拳を見た全ての高校生達が、大物の男の器というものを知った…