伝説の男、黒崎天斗!
伝説の男、黒崎天斗!第5話
清水~、いや、理佳子…そう、理佳子だ。あれほど俺のことを想ってくれてんだ…もう理佳子でいいや。どうしても声が聞きてぇ…理佳子の顔を思い出すと切なくてしょうがない…会いてぇよぉ…会ってあいつを抱き締めてぇ…あの華奢な身体をギュッと抱き締めてぇ…理佳子~理佳子~
俺はいつの間にかこんなに清水のこと好きになってたんだな…もしあいつが俺のことあんなに想ってくれてなかったら?こんなに好きにはなってなかったのかなぁ…でも、あの健気なところが堪んないんだよなぁ…よーし!また電話かけてみるか!
俺は携帯を握りしめ番号を押す…最後の発信ボタンを…ピッ!押したぁ~~~!ヨシ今回はすんなり行けたぞぉ~理佳子~
「プップップップップープープー」
全然呼び出さねぇ~~~こんなにドキドキしながらかけたのに話し中かよ!くっそぉ~、誰だ俺と理佳子の邪魔をするやつわぁ…
理佳子は薫との電話を切ったあとセンチな気分になっていた。
薫は…たかと君と…デートしたんだ…私は…ちょっと話すことしか出来なかったのに…私もたかと君の傍に行きたい…いつも傍で見ていたい…
そしてまた着信音…
理佳子はまた薫から電話があったのかと思い携帯の画面を見た。そこには…
たかと君
理佳子の心臓が急に高鳴りだし回りに自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど大きな音を立てた。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ…
どうしよう…どうしよう…たかと君から…本当に電話来ちゃった…落ち着かないと…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…息が上がってうまく呼吸出来ない…早く電話に出なきゃ…どうしよう…落ち着かないと…携帯を持つ手が震えて落としそうになる。早く電話に出なきゃ…
そして着信音が止まってしまった。
理佳子~電話に出てくれぇ~…
俺はもう一度清水に電話をかけた…が、呼び出し音は鳴るのに電話に出ない…今忙しいのかな…諦めて電話を切った。こんなに勇気出してかけたのによぉ~、理佳子~…切ねぇよぉ…
たかと君から…せっかく電話来たのに…せっかく…でも、たかと君…もしかしたら…他に好きな人が居てその女性にプレゼント選んだんだとしたら…そんなこと知ったら私…
理佳子はかけ直す勇気が出ない。彼と話したい反面複雑な想いが交錯する。
俺は何度もかけても迷惑かと思い電話をかけるのを止めた。忙しい時に一方的に繰り返しかけられるのは相手にしてみればあまりいい気分じゃないもんな。もし理佳子にその気があればかけ直してくれるだろうし。
俺は楽観的になって気長に待つことにした。
たかと君…
好きな人が出来ちゃったの?そっちの学校で好きな人が…私のことどう想ってるの?初めから恋愛対象としては見られてない?この間も手紙ありがとう、嬉しかったとは言ってくれたけど…たかと君の気持ちはわからなかったし…ハァ~…たかと君は何で電話くれたの?薫は何であんなこと言ったの?二人の間に何があったの?もう頭の中がグシャグシャ…切ない…たかと君の気持ちが…知りたい…
理佳子はため息ばかりついていた。
タカ…たかと君をここに連れてきて…お願い……
結局理佳子から電話来なかったなぁ…電話をかけてからもう2日も経っていた。
あいつもう俺のこと…他に誰か好きな男出来たのかな…いや…その可能性は低いだろう…あれだけ俺の知らない所で俺をずっと見ていてくれたんだ…あいつの一途な想いは疑っちゃいけないよな。
雲一つ無い青空の下、心地よい風を受けながら学校の教室の廊下で俺は窓際に立ち窓から校庭をボーッと眺めている。もうすぐ夏休み前の学校祭が控えている。みんなそれぞれいろんなイベントに備えあわただしく動き回ってる。男子女子の賑やかな声が入り乱れ楽しそうな光景だ。昼休みの時間ももう少しで終わろうとしてる。そんな中、別のクラスの女子が俺の側に来た。
「あのぉ…黒崎君…ちょっと良い?」
2年1組の佐々木日登美だった。俺は彼女とは話しもしたことがない。いきなり何の用だろう…
「ん?何?」
俺は笑顔で返事をした。
「黒崎君ってぇ、彼女とか好きな人とか居るの?」
俺はすごく動揺している。何故こんな質問された?何でいきなりそんなこと聞いてきた?
居るよ。居る居る。めっちゃ恋しいやつが居るよ。でも…今は…自信無くしてる…どうしてあいつから連絡来ないのか…あいつの気持ちがわからなくなってる…
「え?どうして?」
俺は曖昧な返事をし彼女の反応を見る。
「もうすぐ学校祭じゃん。一緒に行動する人とか居るのかなぁって…」
それって俺を誘ってんのか?
「いや、一緒に行動するのは野郎くらいだな」
「そっかぁ…じゃあ…黒崎君誘っちゃおうかなぁ…」
佐々木はそこそこ可愛い部類に入る。そして甘え上手なところがあり、上目遣いに俺を誘惑してくる。俺はドキドキが抑えきれない。
「え?えー?いや…でも…いやぁ、参ったなぁ…」
俺は照れながら頭を掻いた。
佐々木日登美が
「私ね、今彼氏居ないんだ…黒崎君転校してきた時からマークしてたんだけど全然私の視線に気付いてくれないし、だから思いきって…」
俺はこの小悪魔的な眼差しに頭がクラクラしてる。あまりにも艶かしい(なまめかしい)この目の前の女に俺は理性を奪われようとしている。
「ほんとに?マジで言ってる?」
半信半疑だが悪い気はしていない。
それに女は嫌いじゃないから甘い誘惑に心が揺さぶられる。
「もちろんだよ。私じゃダメぇ~?」
甘えた猫なで声で俺の肩に頭を乗せてくる。
男はこういう甘え方に弱い生き物だ。
佐々木の甘い香りに五感まで刺激されつい俺は…
「わ…わかった…じゃあ、学祭一緒に歩こうか」
俺は鼻の下を伸ばして言ってしまった。
「ほんとぉ?やったぁ!これって私達付き合ってるのかなぁ…」
俺のすぐ目の前に顔を近づけて来てそう言う…もう俺の理性は完全に崩壊している。
「ん、んー…ど…どうかな…どうなの?」
逆に質問してみる。
「黒崎君がどう想うかだよ」
「いゃあ…」
俺は有頂天になっている。今まで女子からこんなに積極的に責められたことがなかったからウブな俺は彼女の言葉を鵜呑みにしてしまった。
「ほんとに俺で良いの?」
「私ずっと黒崎君見てたんだよ?黒崎君じゃなきゃやだよ…」
佐々木は切なそうな表情で俺の心に訴えてくる。
「わ…わかった…と…とりあえずわかった…」
「とりあえずってどういうこと?」
更に俺を困らせてくる…
内心頭の中では理佳子のことを考えながらも、この積極的な小悪魔に気持ちが揺らいでいる。どうしたら良いんだ…いったいどうしたら…あいつの気持ちも捨てがたいがこの女も…俺はなんて優柔不断なんだ…断らなきゃと思いつつもそれが出来ない…なんて意志が弱いんだ…
「わかった。付き合おう…」
「ほんと?やったぁ!じゃあ今日から一緒に帰ろ?」
えー?今日から?マジでこいつグイグイ来るなぁ…そういうの悪くないけど…
もうすでに俺は全く周りが見えなくなっている。これが俺を貶める(おとしめる)危険な誘惑とも知らずに…
「じゃあ、終わったらそっち行くよ」
「うん!待ってるねぇ~、バイバーイ」
佐々木日登美は笑顔で大きく手を振りながら行ってしまった。
とりあえず理佳子のことは一旦忘れよう。
まだあいつとは付き合ってる訳じゃないし、何考えてるかわからない理佳子よりも楽しそうだしな…
俺は自分勝手に自己解決して浅はかな判断をしてしまったのだった…
その日の放課後俺はドキドキしながら佐々木の姿を探した。帰り支度をし混雑する廊下で佐々木日登美が遠くから俺に向かって手を振っている。俺も照れながら軽く手を振る。
人混みをかき分けながら佐々木が俺の所へ来た。
「タカやんかーえろ!」
凄く懐こい性格のようで数時間でこれ程距離を縮めて来た。
「お…おう…」
俺はニヤニヤしながら返事をする。そして…いきなり俺の手を握って来た。なんて柔らかい小さい手なんだ…これが女子の手の感触か…気持ち良い…俺は少し緊張して手が汗ばんでいる。
「悪ぃ…俺…手汗かいてるわ…」
「全然平気(笑)」
佐々木は可愛い笑顔でそう言った。ほんと男の心をえぐりまくる女だなぁ…どこまでも虜にされちまうぜ!
佐々木は帰り道の中ずっと喋り続ける。今日あったこと、世間話、話しもオチを付けて面白おかしく話す。俺はただただチラチラと彼女の楽しそうな笑顔を見ていた。
駅に着いて佐々木が
「タカやん私ここで電車乗るからまた明日ねぇ~、バイバーイ」
そう言って俺は駅の改札に向かう佐々木を見送っていた。俺はどうしちまったんだ…一瞬にしてあいつの虜になって…理佳子のことはどうすりゃ良いんだ…まだ心の奥で理佳子のことを忘れられずにいる。優柔不断は良くないとわかっていても、あの魔性の女の魅力にとり憑かれてしまっている。もう自分では制御不能状態だ…そして俺はズルズルと佐々木との関係を絶ちきれずにいた。あれから毎日登下校を共にしている。誰から見ても完全に二人は恋人関係に見える。
そして一週間経った。
「タカやん…あのね…ちょっと相談したいことがあるの…」
佐々木は神妙な面持ちで俺にそう言った。
「ん?どした?」
「あのね…最近~…ちょっと恐い人達に付けられててぇ~…困ってるの…」
猫なで声で俺に甘えるように言う。
「え?何で?何かトラブルに巻き込まれた?」
「よくわからないんだけどぉ~…ちょっと恐いから今度ウチに泊まりに来てくれない?来週の土曜日家誰も居なくってぇ~」
うぉー~ーーー!マジかぁ~ーーー!
あり得んあり得んあり得んあり得んあり得ん…こんなシチュエーション絶対あり得ん!
そんなこと言われたら俺の闘争心マックスじゃねーか!ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!落ち着けぇ~、落ち着けぇ~…駄目だ…興奮し過ぎて鼻息が荒くなってる…
「い…家に?良いのか?」
「うん!来て来てぇ~」
こ…これは…もしかするともしかするのか…
女が男を家に誘うってことは…何も無いわけが無いことを十分承知してるってことだよな…お…俺は…とうとう大人の階段を駆け上がることになるのか…
俺はいつの間にかこんなに清水のこと好きになってたんだな…もしあいつが俺のことあんなに想ってくれてなかったら?こんなに好きにはなってなかったのかなぁ…でも、あの健気なところが堪んないんだよなぁ…よーし!また電話かけてみるか!
俺は携帯を握りしめ番号を押す…最後の発信ボタンを…ピッ!押したぁ~~~!ヨシ今回はすんなり行けたぞぉ~理佳子~
「プップップップップープープー」
全然呼び出さねぇ~~~こんなにドキドキしながらかけたのに話し中かよ!くっそぉ~、誰だ俺と理佳子の邪魔をするやつわぁ…
理佳子は薫との電話を切ったあとセンチな気分になっていた。
薫は…たかと君と…デートしたんだ…私は…ちょっと話すことしか出来なかったのに…私もたかと君の傍に行きたい…いつも傍で見ていたい…
そしてまた着信音…
理佳子はまた薫から電話があったのかと思い携帯の画面を見た。そこには…
たかと君
理佳子の心臓が急に高鳴りだし回りに自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど大きな音を立てた。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ…
どうしよう…どうしよう…たかと君から…本当に電話来ちゃった…落ち着かないと…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…息が上がってうまく呼吸出来ない…早く電話に出なきゃ…どうしよう…落ち着かないと…携帯を持つ手が震えて落としそうになる。早く電話に出なきゃ…
そして着信音が止まってしまった。
理佳子~電話に出てくれぇ~…
俺はもう一度清水に電話をかけた…が、呼び出し音は鳴るのに電話に出ない…今忙しいのかな…諦めて電話を切った。こんなに勇気出してかけたのによぉ~、理佳子~…切ねぇよぉ…
たかと君から…せっかく電話来たのに…せっかく…でも、たかと君…もしかしたら…他に好きな人が居てその女性にプレゼント選んだんだとしたら…そんなこと知ったら私…
理佳子はかけ直す勇気が出ない。彼と話したい反面複雑な想いが交錯する。
俺は何度もかけても迷惑かと思い電話をかけるのを止めた。忙しい時に一方的に繰り返しかけられるのは相手にしてみればあまりいい気分じゃないもんな。もし理佳子にその気があればかけ直してくれるだろうし。
俺は楽観的になって気長に待つことにした。
たかと君…
好きな人が出来ちゃったの?そっちの学校で好きな人が…私のことどう想ってるの?初めから恋愛対象としては見られてない?この間も手紙ありがとう、嬉しかったとは言ってくれたけど…たかと君の気持ちはわからなかったし…ハァ~…たかと君は何で電話くれたの?薫は何であんなこと言ったの?二人の間に何があったの?もう頭の中がグシャグシャ…切ない…たかと君の気持ちが…知りたい…
理佳子はため息ばかりついていた。
タカ…たかと君をここに連れてきて…お願い……
結局理佳子から電話来なかったなぁ…電話をかけてからもう2日も経っていた。
あいつもう俺のこと…他に誰か好きな男出来たのかな…いや…その可能性は低いだろう…あれだけ俺の知らない所で俺をずっと見ていてくれたんだ…あいつの一途な想いは疑っちゃいけないよな。
雲一つ無い青空の下、心地よい風を受けながら学校の教室の廊下で俺は窓際に立ち窓から校庭をボーッと眺めている。もうすぐ夏休み前の学校祭が控えている。みんなそれぞれいろんなイベントに備えあわただしく動き回ってる。男子女子の賑やかな声が入り乱れ楽しそうな光景だ。昼休みの時間ももう少しで終わろうとしてる。そんな中、別のクラスの女子が俺の側に来た。
「あのぉ…黒崎君…ちょっと良い?」
2年1組の佐々木日登美だった。俺は彼女とは話しもしたことがない。いきなり何の用だろう…
「ん?何?」
俺は笑顔で返事をした。
「黒崎君ってぇ、彼女とか好きな人とか居るの?」
俺はすごく動揺している。何故こんな質問された?何でいきなりそんなこと聞いてきた?
居るよ。居る居る。めっちゃ恋しいやつが居るよ。でも…今は…自信無くしてる…どうしてあいつから連絡来ないのか…あいつの気持ちがわからなくなってる…
「え?どうして?」
俺は曖昧な返事をし彼女の反応を見る。
「もうすぐ学校祭じゃん。一緒に行動する人とか居るのかなぁって…」
それって俺を誘ってんのか?
「いや、一緒に行動するのは野郎くらいだな」
「そっかぁ…じゃあ…黒崎君誘っちゃおうかなぁ…」
佐々木はそこそこ可愛い部類に入る。そして甘え上手なところがあり、上目遣いに俺を誘惑してくる。俺はドキドキが抑えきれない。
「え?えー?いや…でも…いやぁ、参ったなぁ…」
俺は照れながら頭を掻いた。
佐々木日登美が
「私ね、今彼氏居ないんだ…黒崎君転校してきた時からマークしてたんだけど全然私の視線に気付いてくれないし、だから思いきって…」
俺はこの小悪魔的な眼差しに頭がクラクラしてる。あまりにも艶かしい(なまめかしい)この目の前の女に俺は理性を奪われようとしている。
「ほんとに?マジで言ってる?」
半信半疑だが悪い気はしていない。
それに女は嫌いじゃないから甘い誘惑に心が揺さぶられる。
「もちろんだよ。私じゃダメぇ~?」
甘えた猫なで声で俺の肩に頭を乗せてくる。
男はこういう甘え方に弱い生き物だ。
佐々木の甘い香りに五感まで刺激されつい俺は…
「わ…わかった…じゃあ、学祭一緒に歩こうか」
俺は鼻の下を伸ばして言ってしまった。
「ほんとぉ?やったぁ!これって私達付き合ってるのかなぁ…」
俺のすぐ目の前に顔を近づけて来てそう言う…もう俺の理性は完全に崩壊している。
「ん、んー…ど…どうかな…どうなの?」
逆に質問してみる。
「黒崎君がどう想うかだよ」
「いゃあ…」
俺は有頂天になっている。今まで女子からこんなに積極的に責められたことがなかったからウブな俺は彼女の言葉を鵜呑みにしてしまった。
「ほんとに俺で良いの?」
「私ずっと黒崎君見てたんだよ?黒崎君じゃなきゃやだよ…」
佐々木は切なそうな表情で俺の心に訴えてくる。
「わ…わかった…と…とりあえずわかった…」
「とりあえずってどういうこと?」
更に俺を困らせてくる…
内心頭の中では理佳子のことを考えながらも、この積極的な小悪魔に気持ちが揺らいでいる。どうしたら良いんだ…いったいどうしたら…あいつの気持ちも捨てがたいがこの女も…俺はなんて優柔不断なんだ…断らなきゃと思いつつもそれが出来ない…なんて意志が弱いんだ…
「わかった。付き合おう…」
「ほんと?やったぁ!じゃあ今日から一緒に帰ろ?」
えー?今日から?マジでこいつグイグイ来るなぁ…そういうの悪くないけど…
もうすでに俺は全く周りが見えなくなっている。これが俺を貶める(おとしめる)危険な誘惑とも知らずに…
「じゃあ、終わったらそっち行くよ」
「うん!待ってるねぇ~、バイバーイ」
佐々木日登美は笑顔で大きく手を振りながら行ってしまった。
とりあえず理佳子のことは一旦忘れよう。
まだあいつとは付き合ってる訳じゃないし、何考えてるかわからない理佳子よりも楽しそうだしな…
俺は自分勝手に自己解決して浅はかな判断をしてしまったのだった…
その日の放課後俺はドキドキしながら佐々木の姿を探した。帰り支度をし混雑する廊下で佐々木日登美が遠くから俺に向かって手を振っている。俺も照れながら軽く手を振る。
人混みをかき分けながら佐々木が俺の所へ来た。
「タカやんかーえろ!」
凄く懐こい性格のようで数時間でこれ程距離を縮めて来た。
「お…おう…」
俺はニヤニヤしながら返事をする。そして…いきなり俺の手を握って来た。なんて柔らかい小さい手なんだ…これが女子の手の感触か…気持ち良い…俺は少し緊張して手が汗ばんでいる。
「悪ぃ…俺…手汗かいてるわ…」
「全然平気(笑)」
佐々木は可愛い笑顔でそう言った。ほんと男の心をえぐりまくる女だなぁ…どこまでも虜にされちまうぜ!
佐々木は帰り道の中ずっと喋り続ける。今日あったこと、世間話、話しもオチを付けて面白おかしく話す。俺はただただチラチラと彼女の楽しそうな笑顔を見ていた。
駅に着いて佐々木が
「タカやん私ここで電車乗るからまた明日ねぇ~、バイバーイ」
そう言って俺は駅の改札に向かう佐々木を見送っていた。俺はどうしちまったんだ…一瞬にしてあいつの虜になって…理佳子のことはどうすりゃ良いんだ…まだ心の奥で理佳子のことを忘れられずにいる。優柔不断は良くないとわかっていても、あの魔性の女の魅力にとり憑かれてしまっている。もう自分では制御不能状態だ…そして俺はズルズルと佐々木との関係を絶ちきれずにいた。あれから毎日登下校を共にしている。誰から見ても完全に二人は恋人関係に見える。
そして一週間経った。
「タカやん…あのね…ちょっと相談したいことがあるの…」
佐々木は神妙な面持ちで俺にそう言った。
「ん?どした?」
「あのね…最近~…ちょっと恐い人達に付けられててぇ~…困ってるの…」
猫なで声で俺に甘えるように言う。
「え?何で?何かトラブルに巻き込まれた?」
「よくわからないんだけどぉ~…ちょっと恐いから今度ウチに泊まりに来てくれない?来週の土曜日家誰も居なくってぇ~」
うぉー~ーーー!マジかぁ~ーーー!
あり得んあり得んあり得んあり得んあり得ん…こんなシチュエーション絶対あり得ん!
そんなこと言われたら俺の闘争心マックスじゃねーか!ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!落ち着けぇ~、落ち着けぇ~…駄目だ…興奮し過ぎて鼻息が荒くなってる…
「い…家に?良いのか?」
「うん!来て来てぇ~」
こ…これは…もしかするともしかするのか…
女が男を家に誘うってことは…何も無いわけが無いことを十分承知してるってことだよな…お…俺は…とうとう大人の階段を駆け上がることになるのか…