その海は、どこまでも碧かった。
「ねぇ…三咲さん
抱きしめてもいい?」
「風美くん、無理に言ってる?」
「いや…
そしたら三咲さん寝れるかな?」
「わかんない
…
でも、できないでしょ
風美くん
…
私のこと抱きしめたりなんて
できないでしょ」
「わかんない」
海以外の女の子
抱きしめたことなんてないから
「じゃあ、抱きしめてみて…」
「うん…」
そっと三咲さんに手を回した
抱きしめた彼女は
冷たくて硬くて
ガラスみたいだった
海とぜんぜん違う抱き心地
壊れやすいものを抱くみたいに
優しく抱いた
「三咲さん、緊張してる?」
「うん、緊張してる
だって、前に好きだった人に
抱きしめられてるんだよ」
「寝れそう?」
「どぉかな…」
三咲さんの涙はおさまってた
三咲さんの背中をゆっくり撫でたら
オレの手が触れるところから
三咲さんはゆっくり温かくなった
氷が解けるみたいに
オレに少しずつ馴染んだ
三咲さんの手はぎこちなく
オレの腰あたりに置かれてた
少しだけ抱きしめる腕に力を込めたら
三咲さんが近くなった
三咲さんの手がオレの背中にゆっくり回った
抱き合ってる
今日ほぼ初めて喋った子と
海以外の女の子と