その海は、どこまでも碧かった。
碧くんは私がいないみたいに真っ直ぐ歩いた
私は碧くんの後ろ姿を追い掛けた
いつもと違う
碧くん?
「碧くん
誰かと一緒にいた?」
「見てた?」
「ん?見てないけど…
碧くん、いつもと違う匂いする」
「気のせいじゃね?」
「気のせいかな?」
甘い匂い
「碧くん
私に彼氏ができて、寂しい?」
「…寂しいわけないじゃん」
「じゃあ、嬉しい?」
「うん…
よかったね、海」
よかったのかな?
まだ特によかったと思えるようなことはない
碧くんがよかったねって言ってくれるなら
よかったんだよね
碧くんと手繋ぎたいな
さっきまで宙と繋いでたのに…
気のせいじゃない
碧くんの背中から
甘い匂いするよ
「海、オレが可愛そうだから
走って来てくれたの?」
「んーん、碧くんと一緒に帰りたかった」
「普通、彼氏選ぶだろ
少しでも長く一緒にいたいと思うだろ」
「そーかな?」
「そーだろ」
碧くんは
甘い匂いの人と
もっと一緒にいたかった?
碧くん
ヤダな
いつもの碧くんの匂いがいい
碧くんがいつもより冷たく感じるのも
碧くんの後ろ姿が遠く感じるのも
気のせいじゃない気がする
碧くん
好きな人
できた?