その海は、どこまでも碧かった。

「海!」



碧くんの声ってすぐわかった



でも振り向きたくない気分だった

スーツケースを引いて歩き続けた



「オイ!無視すんな!海!」



「…」



「迎えに来ないつもりだったけど
白い恋人迎えに来たわ
買ってくれた?」



「…」



「オーイ!

話し掛けないつもりだったけど
ひとりで寂しそうに歩いてる人いたから…」



「…」



「海、なんかあった?」



「…」



「修学旅行、楽しかった?
①楽しかった②楽しくなかった
③どちらかというと楽しかった
④どちらかというと楽しくなかった
⑤答えたくない」



「①」



「ぜんぜん楽しそうに見えないけど!」



「…」



「海!なんか言え!」



碧くんに肩を掴まれた



「痛い!
痛いよ!碧くん!
やめてよ!碧くんのバカ!」



そう言ったら

いきなり碧くんに抱きしめられた



肩を掴んだ手と

同じ手じゃないみたいに

優しかった



「痛かった?
ごめんね、海」



「うん…痛いよ…碧くん…

碧くん…
会いたかった…
会いたかったよ…」



「おかえり…海…」



「ただいま…
お土産、買ってきた」



「さんきゅ」



痛かった心が

碧くんに優しく包まれた



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