社会不適合者
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『…あっ!おはよう、花奏ちゃん!』

「…おはよう、里桜ちゃん……。」

 図書館で出会った次の日、私達はとある駅で待ち合わせをし、お出掛けをすることになった。
母にこの事を告げたら、とても驚いていた。『誰と?お友達?!…よかったね、楽しんでおいで!』と、笑顔で送り出してくれた。

今日の里桜ちゃんは、胸元に黒のサテンリボンが付いた淡いピンクのワンピースを着ていた。それに、今日は髪を下の位置でツインテールに結っている。まるでお嬢様のようで、私の私服に比べたら横に並んで歩くのが恥ずかしいような劣等感を感じていた。

『花奏ちゃん、今日のお洋服、凄く可愛いね!』

今日の私の服装は、白のTシャツにデニムのスカート。

「えっ…本当……?」

『うん!カジュアルで、凄く花奏ちゃんに似合ってるよ!』

「…ありがとう…………!」

『あっ……!花奏ちゃん、やっと笑ってくれた!』

「えっ……?」

『なんだか昨日はずっと私、花奏ちゃんに気を遣わせてるんじゃないかって思ってて…だから笑ってくれて嬉しいよ!友達になったんだからこれからはもっと一緒に笑いたいな。ね!花奏ちゃん!』

「………うん!」 

凄く、きっと人生で1番嬉しい瞬間だった。
出会ったばかり。友達になりたて。
それなのに…
_私なんかと仲良くしてくれる。_

『ね、じゃあ行こっか!花奏ちゃん!』

「うん!」

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この日は、映画を観たりご飯を食べたり、プリクラを撮ったり全部が新鮮だった。
だって、“友達”ができたのも、こうして誰かと出掛けるのも全部が初めてだったから。

この日から、私はよく話したりよく笑ったりするようになった。

_里桜ちゃんの、おかげ。_

 しかし、この日の帰りの電車の中で、里桜ちゃんが泣いていた本当の理由を、私はまだ知らなかった。いや、知りたくなかった。
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