社会不適合者
『引っ越して、隣の県に行く。2学期からはそっちに通うんだ。』

「……ってことは……………、まさか…。」

『うん、転校…だよ。明後日にはこの県を出る。』

この日は8月21日。ここら辺の地方では、始業式が8月25日の小学校がほとんどだ。つまり、23日にはこの県を出るということだろう。

「………………………………。」

『ごめんね、今日ずっと言えなくて。』

「………………。」

私はただ、黙ることしかできなかった。

『私、引っ越す前に、誰かと友達になっておきたかったんだ。この街の、同い年の女の子と…。』

「…………………………………………。」

『いじめに耐えきれなくて転校なんて、まさか自分がするとは思ってなかったけど、両親が私の為にって決めてくれたんだ…だから、花奏ちゃんにもう会えなくなる…って、つい泣いちゃった。』

里桜ちゃんは悔しそうに、また苦笑した。

『LINEだって交換してるし、お揃いのボールペンだってあるから、きっと離れてても大丈夫!って、何度も自分に言い聞かせたんだけど…やっぱダメだなぁ、だって、違う県に行っちゃうんだもん。辛くなっても、頼れる子が…、花奏ちゃんが側にいてくれたら心強いのにっ…なのにっ………私っ………!』

里桜ちゃんの目から、ずっと堪えていたであろう涙が溢れた。

「……………大丈夫…、里桜ちゃん。」

私は、里桜ちゃんの背中をさすって白いハンカチを差し出すことしかできなかった。

そして、23日。教えてもらった里桜ちゃんの家に行き、プレゼントを渡しに行った。

あの雑貨屋さんで買った、私と里桜ちゃんのもうひとつのお揃い。

シルバーのハートが付いているペンダント。
そのペンダントは、シルバーのハートのところにストーンが付いている。里桜ちゃんは、ピンクのストーンが付いているもの、私は黄色のストーンが付いているもの。

_あのボールペンと、同じ色。_

それを渡すと、里桜ちゃんは涙を堪えて『ありがとう…!』と言い、車に乗って去って行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あれからもうすぐ、1年。
< 8 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop