独身狂騒曲


 レースのデザインが可愛い白のピンヒールのアンクレットストラップを外し、レモンイエローとターコイズブルーの可愛い爪先をフローリングにつけた。


「はぁー、疲れたー!飛行機で12時間だよー12時間!もう体ガチガチ……」
「追い焚きするね。入浴剤入れとく?お肌とぅるんとぅるんになるやつ」
「入れる入れる!珠樹は気が利くねー!偉いねー!」


 なでなでと前髪を撫でられて、思わず照れる。八つも年が離れているからか、お姉ちゃんはいつまでも私に小さい子供に接するようにする。和泉ちゃんに対してもそんな感じだけど、私が末っ子だからなのか特に甘い。


「明日合コンだから、私はそろそろ寝るね。お姉ちゃん、あとは適当にしてて」
「えっ!?合コン!?」


 はい、とお姉ちゃんにバスタオルとフェイスタオルそれから着替え諸々を渡しながら言うと、お姉ちゃんがぎょっとしたように振り返る。


「珠樹、合コン行くの?」
「行くよ。彼氏欲しいもん」


 お姉ちゃんは三年前にアメリカ人のイケメンと結婚していて、和泉ちゃんも高校生の時から付き合ってる彼氏がいる。私だって、彼氏欲しいもん。


「珠樹に、彼氏……?」


 何故かショックを受けたような顔で固まるお姉ちゃんの中で、私は一体何歳で止まっているんだろう。

 というか、お姉ちゃんは割とシスコンだ。


「お姉ちゃん、……私もうすぐ二十四だよ?彼氏だって普通に作るよ」
「ああうん、いや、それは分かってるんだけど……」


 お姉ちゃんはタオルと着替えを受け取りながら、複雑そうな顔で右手を頭に当てた。して、ぶつぶつ心配事のようなものを呟きながら脱衣所に向かう後ろ姿を見送って、小さく息を吐いた。……寝よ。

< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop