残業は、何のため?
「ーー村井さん、終わった?」
「ひえっ⁈」
私は座ったまま飛び上がった。
あれから、更に一時間。
集中してたのに、いきなり耳元で、声。
20時過ぎ。外は闇が深くなり、夜景が際立つ。
人気の無いフロアには、私のデスク近辺しか灯りがついていない。
自分の席の周りだけボンヤリ明るくて、周りは暗い。
軽く、背中がチリチリするホラーな雰囲気。
何を隠そう、ビビってましたよ⁉︎
更に、キラキラエフェクト付きのイケメンフェイスとヴォイスが、至近距離にある。
飛び上がらない方がおかしい。
大体、何故耳元で声を掛ける⁈
近いわ!
左耳を押さえて、この残業の元凶ーー安田主任を涙目で睨みつける。
「…めっちゃ、怖かったですよ‼︎
何でこんなことするんですか‼︎」
盛大に文句を言うと、主任は吹き出した。
滅多に見られない無防備な笑顔にドキッとするも、恥ずかしいのて顰めっ面をキープだ。
顔が赤くなるのは、勘弁して欲しい。
だってイケメンだよ⁈
普通の男の人にだって、こんなことされたらドキドキするのに、ダメージ5割り増しだ。
主任は、クスクス笑いながら、悪いと一言謝った。
絶対、思ってないでしょ⁈
私は、頬を膨らませつつディスプレイに向かった。