ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
長野先生は、いつも私を気にかけてくれる。相談しやすくて、つい、いつも甘えてしまう。

それは、多分、私が長野先生から見て『女』ではなく、手のかかる『後輩』だと分かってるから。


コンロの火を消して、残った鍋の様子を見る。煮えたぎっていたお鍋も火が消えれば、おとなしくなった。


私の心と似てる。離れてみれば、孝弘さんの顔も声も次第に曖昧になり、残ったのは幸せで楽しかったという思いだけ。私の恋心はハワイで燃えて、燃え尽きてしまったのかな。
もう、引き際なのかもしれない。
けど。正直、割り切れない自分もいる。


「心配して下さって、ありがとうございます。
今はとにかく仕事のことで頭がいっぱいです。今夜も呼び出しがないことを祈るばかりです」

そうだな、と長野先生は笑った。
その笑顔は、患者の子供達を安心させる。今は私の迷う心を落ち着かせてくれた。

「ま、二葉が結婚したくなって、どーしても貰い手がなかったら、貰ってやってもいいぞ」
「遠慮しときます。浮気されまくりなのは流石にしんどいですよー」
「なんだ、二葉なら許してくれるかと思ったのに」

そんな冗談で、笑わせてくれる。
こんな肩に力を入れずに過ごせる時間が、とてもありがたい。





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