ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
念のためと救急車で運ばれた。
運ばれた先は、勤務先の光英大学病院だ。


私は手と頬に軽い火傷を負っていた。


「ありがとうございます、水上先生」
「いやいや、こちらこそ。いつも陽翔と晃翔がお世話になってます」


担当してくれたのは外科医の水上冬輝(みずかみとうき)先生。私のアルバイト先のクリニックに来る兄弟のお父さん。合コン大好き長野先生と同級生だけど、水上先生は真面目で誠実を絵に描いたよう。真逆に見えるお二人は不思議と仲が良い。


「それにしても、アパートが火事なんてツイてないというか、軽症でツイてたというべきか…。
念のため、長野には連絡しておいたよ。しばらく休みにしてもらうといい。
今夜はどうするの?泊めてくれるカレシとかいるのかな?」

「いえ…急に泊めてくれる友達もいなくて。よく見たらひどい格好」

着ていた服はあちこちススで黒く汚れている。寝ていたからしわくちゃだし。こんな格好じゃ、まともに外も歩けない。

「なら、とりあえずココに泊まるかい?」
「…そうですね!そうします」

更衣室のロッカーには、泊まり込み用の着替えもある。今夜は何とかなりそう。

「明日からのことは、事務部長に相談するといいよ。寮に空きがあればいいし、空きが無くても病院近くの賃貸マンションとか知っているかもしれないから」
「…今住んでいる部屋、もう住めないでしょうか?」
「たぶんね。火が回ってなくても、消火のあとで大変なことになってると思うよ。…あ、長野!」
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