ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「ホントもう、帰れ。自分で思ってる以上に疲れてるはずだよ」
「でも…」
「患者が大切なことは勿論だけど、まずは自分を大事にすること。基本だろ?二葉が倒れたら、大変だ。
それとも、俺と一緒に居たいのかな?」

前半は先輩らしく厳し目に言ったあと、冗談を言っておどけてみせるのは長野先生らしい。

「そうですね。夜通し長野先生の武勇伝を聞いてるのも悪くないかな」
「お、言うじゃないか。じゃあ、それはぜひ次の機会にな。その時にはついでだから、二葉、俺の武勇伝の最後のページに名前を連ねろよ。俺の最後の女としてさ」

いつものように冗談には冗談で返してみたものの。昨日からなんだか、長野先生のいつもの冗談が重い。冗談に聞こえない。
まさか、ね。

「なんか、言い回しが古い。それじゃ、合コンで若い女の子に笑われますよ?」

私は笑い飛ばして椅子から立ち上がった。

…あれ?
普通に立ち上がっただけなのに、ふと足元がぐらついた。

「おっと」

よろけた私を、長野先生があわてて支えてくれる。背中に回された腕がしっかりと私の体をつかんでくれた。

「だから言ったろ?思っているより疲れているんだよ。こんな状態で業務にあたってミスが起きてもいけない。帰れ。これは命令」

長野先生の言う通りかもしれない。さすがに体が言うことを聞かない。休めばきっと落ち着くだろう。

ただ。問題が一つ。
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