ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜


「いい話、ですね」

車がマンションの駐車場に到着した。私の思い出話もちょうど終わる。

「先生、今はどうしているかなぁ」

「会いに行かれれば良いのに」

「あの病院、今は閉院してしまったんです。その先生も今はどうしていらっしゃるか。
でも、いつかどこかで会えたら、胸を張って夢を叶えましたって言えるように、私、これからも頑張ります」

「…私が探してみましょうか、その先生」

きっと琴羽さんなら、間違いなく先生を見つけられる。だけど、私は丁寧に断った。

「同じ職業です。いつか、きっとどこかで会える。私はそれでいいんです」

「そうですか?まぁ、初恋の綺麗な思い出をわざわざ蒸し返す必要もないかもしれませんね」

やだ、初恋だなんて、琴羽さん、勘違いしてる!

「初恋って違います、女の先生ですから!
送っていただいてありがとうございました。また、明日」

私はそうお礼を言って車から降りようとした。

「私、明日は休みです。火事のことも花音のことも孝弘くんに任せていますので。よろしくお願いします。
では。お疲れ様でした、二葉先生」

私は開けようとして車のドアに手をかけたまま、固まってしまった。

孝弘くんに任せてるって、琴羽さん、さりげなく何を言ってるんだろう?孝弘くんって、あの孝弘さんだよね?

「孝弘くんって、弁護士の…?」

「丹下孝弘くんです。二葉先生、よくご存知では?」

「えぇ、知ってますけど…お知り合いなんですか?」
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